第三章 少年

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 隠れ家に戻ると、セリーナと少女が待っていた。  セリーナは少女に置いてあった本物の金貨がぎっしり入った袋を渡した。 「家まで送っていく」  その間に、右手の手袋を新しいものに換えたヴィアザが言った。 「ありがとう!」  貧困街の一角に、兄妹が住んでいる粗末なテントがあった。その前には以前顔を出した少年がいた。 「お兄ちゃん!」 「レレ! 無事だったんだね!」 「その袋は、お前達が生きるために、使え」 「え……? これ、返したはず……?」  中身を見た少年が首をかしげた。 「ろくでもない賭けなんか、するなよ?」 「しない! でも、どうして?」 「貴族の目を、誤魔化したのさ」  ヴィアザは薄く笑みを浮かべた。 「ありがとう! それと、これ!」 「?」  ヴィアザは金貨五枚を差し出してきた少年を見て、首をかしげた。 「助けてくれた、お礼! 噂話は最後まで知ってるから」 「分かった。達者で暮らせよ」  ヴィアザが金貨を受け取って歩き出すと、二人の兄妹は、ぺこりと頭を下げた。
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