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第四章 治療
「これで分かっただろう? 俺のやり方が」
帰り道、ヴィアザが言った。
「ええ。それよりも、傷。なんとかしないと」
「バレていたか。隠していたつもりだったんだが。大丈夫だ、そんなに焦らなくても」
ヴィアザは溜息を吐きながら言った。
「怪我しているのよ!? 焦るに決まっているでしょう!」
セリーナが怒鳴った。
「これから医者のところへいくんだよ」
怒ったセリーナに、まあ待て、と言わんばかりに手を出したヴィアザが言った。
「そうなのね。一緒にいくわ」
「なんでだ?」
ヴィアザは不機嫌そうに突っ込みを入れた。
「怪我人から目を離せないのよ」
「……ったく」
ヴィアザは舌打ちをした。
貧困街を抜けて、一般街の外れに向かった。
「ここだ」
ヴィアザが立ち止まった。
目の前には医務院と書かれた看板があった。
「入るぞ。俺だ」
「また君かい? それと、後ろの子は誰?」
入ってすぐの部屋にいた白衣を着た男が声を上げた。見た目は四十歳くらいで、小柄に見えた。
「連れだ」
ヴィアザはそれだけ告げると、奥の部屋へずかずかと入ってしまった。
「……セリーナです」
セリーナはとりあえず、名乗った。
「私はニト。ちょっと待っていてね」
ごく普通の顔立ちをしているニトはそう言い、立ち上がった。
「はい」
セリーナはうなずくと、近くの椅子に座って、しばらく待った。
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