第七章 貴族の娘

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 そのころヴィアザはと言うと、次々に出てくる男達を斬りながら、突き進んでいた。フードを外して、冷然と嗤いながら。  駆け抜けているヴィアザは、怪我をしている。勢いでつけられた胸の斬り傷を気にもせず、動き続けていた。  一撃で一人ずつ命を奪っていく。殺意を肌で感じながら、男達を上回る殺気を放って。  目前に剣が迫ってきた。がきんっと受け止めて弾き返し、首を斬り裂いた。  刃は止むことなく次々に繰り出される。  まるで無限ループに入ったのかと錯覚するほどに。  すべての刃を弾き返しながら、確実に頭数を減らしていった。  返り血が着ている服を汚していく。  それでも、足を止めない。  と、しばらく駆けていたが、男達の波が突然失せた。  周囲を見回すと、着飾った連中が、大勢いた。なにかのパーティーかもしれないと思ったが、ヴィアザは近くにいた男の胸を突き刺した。ひとつの骸が倒れると同時に、それを見ていた連中が悲鳴を上げ始めた。周囲はパニック状態になった。  それを見ていた女が逃げようと足を踏み出した瞬間、一発の弾丸がどこからともなく放たれ、床を穿(うが)った。 「誰一人、逃がさないわよ」  唯一の出入り口に立ったのは、セリーナだった。  彼らがきてから、混乱と悲鳴の溢れる場となってしまった。  発砲音と刀が肉を断つ音が響き、骸が次々に倒れていく。彼らがしているのは一方的な殺戮(さつりく)である。地獄と化したその場をなんとも思わず、二人は冷めた目をしながら、手を止めなかった。  武器の有無に、生きたいと懇願する者も関係なく、二人で数多くの人間を殺し尽くした。  生きたいという意思を、完膚なきまでに否定したのだ。  その最中、ヴィアザは一人の男が奥へ逃げていくのを見た。  セリーナに視線を送ると、二人で奥へ向かった。
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