第七章 貴族の娘

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 奥の部屋にいくまでの廊下で、一人の男が行く手を阻むように立っていた。 「俺が相手をする。そこにいろ」  ヴィアザの低い声にうなずいたセリーナだったが、なにが起こってもいいように、リヴォルバーのグリップを握っていた。 「弱そうな男だな、一人で大丈夫なのかあ?」  大剣を構えた男が嘲笑った。 「見かけだけで判断するのは、間違っているぞ」  ヴィアザは冷たい笑みを浮かべながら言うと、瞬時に距離を詰めて、刀を振り下ろした。 「おっと! 怪我しているうえに、そんな武器で、おれを殺せるのかなあ?」  男の嘲りは続いた。 「殺せるとも。今まで数えきれない敵を斬ってきた」 「勝手に言ってろよ。おれには敵わないさ」 「相当、腕に自信があるようだな。俺は、そういう奴が大嫌いだ」 「おれも、お前のことは嫌いだな! ほうら! 躱せるもんなら、そうしてみろっ!」  男は大剣の重さを使った回転切りを繰り出してきた。  ヴィアザはその場で力強く跳躍した。 「なにっ!」  男は思わず声を出すが、すぐさま動きを切り替えられない。  男はそのまま、廊下の壁へ激突した。壁が抉れていく。  男の背後へ降り立つと、動きが止まったところで、距離を詰め、突きを繰り出した。  それは男の腹を刺し貫いた。 「がっ……!」  ヴィアザは無情にも、腹の傷を深く抉った。  男が鮮血を吐き出した。  ヴィアザは刀を無造作に引き抜いた。恐ろしいほど冷たい笑みを浮かべたまま。 「お前ええ!」  腹を押さえながら、男が叫んだ。 「じきに死ぬが、もう少し、頑張ってもらわないとなあ」  ヴィアザが冷たい笑みを浮かべて言い放った。 「殺して、やる……!」  鮮血をどばどばと吐きながら言った。 「やれるものなら、やってみろ」  ヴィアザが挑発すると、男が大剣を振り下ろしてきた。  その大剣を左手に構えた刀で受け止めたヴィアザ。  いくら力を込めてもびくともしない。 「ちくしょう!」  ヴィアザは大剣を弾き返し、心臓を刺し貫いた。 「くそおおおおっ!」  男はそう叫んでこと切れた。 「うるさいんだよ」  ヴィアザは刀についた鮮血を殺ぎ落として、言い放った。  男の骸を踏み越えて、部屋のドアを蹴り開けた。
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