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奥の部屋にいくまでの廊下で、一人の男が行く手を阻むように立っていた。
「俺が相手をする。そこにいろ」
ヴィアザの低い声にうなずいたセリーナだったが、なにが起こってもいいように、リヴォルバーのグリップを握っていた。
「弱そうな男だな、一人で大丈夫なのかあ?」
大剣を構えた男が嘲笑った。
「見かけだけで判断するのは、間違っているぞ」
ヴィアザは冷たい笑みを浮かべながら言うと、瞬時に距離を詰めて、刀を振り下ろした。
「おっと! 怪我しているうえに、そんな武器で、おれを殺せるのかなあ?」
男の嘲りは続いた。
「殺せるとも。今まで数えきれない敵を斬ってきた」
「勝手に言ってろよ。おれには敵わないさ」
「相当、腕に自信があるようだな。俺は、そういう奴が大嫌いだ」
「おれも、お前のことは嫌いだな! ほうら! 躱せるもんなら、そうしてみろっ!」
男は大剣の重さを使った回転切りを繰り出してきた。
ヴィアザはその場で力強く跳躍した。
「なにっ!」
男は思わず声を出すが、すぐさま動きを切り替えられない。
男はそのまま、廊下の壁へ激突した。壁が抉れていく。
男の背後へ降り立つと、動きが止まったところで、距離を詰め、突きを繰り出した。
それは男の腹を刺し貫いた。
「がっ……!」
ヴィアザは無情にも、腹の傷を深く抉った。
男が鮮血を吐き出した。
ヴィアザは刀を無造作に引き抜いた。恐ろしいほど冷たい笑みを浮かべたまま。
「お前ええ!」
腹を押さえながら、男が叫んだ。
「じきに死ぬが、もう少し、頑張ってもらわないとなあ」
ヴィアザが冷たい笑みを浮かべて言い放った。
「殺して、やる……!」
鮮血をどばどばと吐きながら言った。
「やれるものなら、やってみろ」
ヴィアザが挑発すると、男が大剣を振り下ろしてきた。
その大剣を左手に構えた刀で受け止めたヴィアザ。
いくら力を込めてもびくともしない。
「ちくしょう!」
ヴィアザは大剣を弾き返し、心臓を刺し貫いた。
「くそおおおおっ!」
男はそう叫んでこと切れた。
「うるさいんだよ」
ヴィアザは刀についた鮮血を殺ぎ落として、言い放った。
男の骸を踏み越えて、部屋のドアを蹴り開けた。
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