第八章 噂話の真実

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「入るぞ」  ドアをノックもなしに開けると、声を出した。 「今回はどんな状態だい?」  ニトに見えるようにマントを退けた。 「これは酷い。早く奥へ」  ヴィアザはうなずきながら、奥の部屋へ向かった。 「ちょっと待っていてね」  セリーナがうなずいて、近くにある椅子に座った。  ニトは必要な物をかき集めて、奥の部屋に入った。 「ちらっとしか見ていないけれど、かなり酷いのは分かってる。診せて」 「分かった、分かった」  ヴィアザはそう言うと、手早くマントとワイシャツを脱いだ。胸には斬り傷、腹には深い刺し傷があった。  背中を確認したニトは、安堵した。貫かれてはいなかったからだ。 「傷を負わずに勝つってことは、できないのかい?」  手を動かしながら、ニトが尋ねた。 「無理な相談だ。かなり、面倒だからな」  ニトは二か所の傷に薄手の布を当てて、布の端を白いテープをはり、固定した。  手早く包帯を巻きつけると、ニトが軽く肩を叩いた。 「お終い。傷が塞がるまで、戦っちゃダメ」 「二日ぐらいで治るさ」  ヴィアザは言いながら身支度をして、金貨一枚を払うと、セリーナの許へ。 「なんだって?」 「二日は大人しくしていろってさ」 「依頼がきても少し待ってもらわないとね」 「そうだな」  ヴィアザは言いながらフードを目深に被ると、医務院を去った。  セリーナも出ていこうとして、ニトに一礼すると、追い駆けた。 「ニトの前だからああ言ったが、依頼の内容によっては、すぐ動く」  隠れ家に戻ると、ヴィアザが言った。 「止めたってそうするんでしょ? なんとなく分かってたよ」  セリーナが溜息を吐いた。
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