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第一章 捜していた人物との出会い
時を少し遡る。ゴロツキ二人が酒場から出てくると、一人の女がいた。
二十八歳ぐらいだろうか。黒髪でショートボブ。目は茶色。整った顔立ちをしているので、よく男に絡まれる。服装は、落ち着いた緑で、足首までの丈の花柄のロングワンピース。ライフル銃を背中に背負い、腰には黒のしっかりしたベルトを巻いていて二挺の大口径のリヴォルバーがホルスターに収められている。左腰の後ろには弾丸の入ったポーチを巻きつけている。
むしゃくしゃしていた二人は、粗末な短剣を手に襲い掛かった。
だが、次の瞬間、二人は地面に転がっていた。腹が痛い。なにで殴られた?
「ちょっと聞きたいんだけれど、〝漆黒の狼〟とかって知っている?」
「名前だけならな! 噂以上のことは知らねぇ」
「あっそ。あんた達なんかに聞いた、あたしが馬鹿だった。じゃあね?」
にこりと笑みを浮かべた女は、手にしているリヴォルバーの引き金を引いた。
「な、なんで……?」
心臓を撃たれたゴロツキ達が声を出した。
「理由、知りたいの? 決まっているじゃない。あんた達があたしよりも、弱いからよ? ここ、貧困街の掟、知らないとは言わせないわよ」
「……」
「命は木の葉よりも軽い。生きたくば、強者であれ」
無言のゴロツキ達を睨みながら、女は言葉をそらんじた。
骸を跨いで、酒場に入った。
「隣、いいかしら?」
「ああ。あの二人組、殺したのか」
男が囁いた。
「ええ。あんなの、目障りでしかないから」
「そうだな」
運ばれてきた酒を、女は一気に飲み干した。
それを見ながら、杯を煽った。
「ひょっとして、あなた……?」
「聞くなら先に名乗れってんだよ」
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