闇を斬る男 ヴィアザ・ヴァンフォール

第九章 仇

　時を少し遡る。
　ヴィアザは屋敷の戸を蹴り開けてから、大勢の男達の相手をしていた。被っていたフードは自然と外れていた。
「賊は一人だ！　さっさと倒してしまえ！」
　どこからともなく、そんな声が聞こえた。
　――囮にはなったようだな。
　その言葉を受け、内心でそう思ったヴィアザは、刀を抜いた。
　男達は、ダークブルーの刀身に、目を奪われてしまっていた。
「見惚れるなど、強者がすることだ」
　ヴィアザは冷ややかに言い放つと、二人の男の首を切断した。
　ふたつの生首が地面に転がった。
　バタバタと、斬られた身体が倒れた。
「ひっ……！」
　その光景を目にしていた一人の男は、背を向けて逃げ出そうとした。
「待てよ。俺は誰一人、逃がすつもりはないぞ？」
　ヴィアザは言い放つと同時に、背中から心臓を刺し貫いた。
「がはあっ！」
　どばどばと鮮血を口から吐き出した男は、そのまま骸となった。
　骸から無造作に刀を引き抜き、ヴィアザは、距離を取っている男達を睨みつけた。
「さて、死にたい奴、出てこいよ。さっさと殺してやるからさ」
「かかれ！」
　誰かの声がまた響いた。
　指示に逆らえないのだろう、男達はやけくそになって、襲い掛かってきた。
「死に場所も、自分で決められないとは。哀れだな」
　ヴィアザは溜息混じりに言い放つと、一人の男の心臓を刺し貫いた。
　骸をその場に捨て置き、振り返ろうとした瞬間、別の男からの突きを受けてしまった。
　背中から、腹までを貫かれてしまった。
　鮮血を口端から滴らせながら、冷たい笑みを浮かべた。
「な、なんだ！　こいつ……！」
　その表情を見た男が悲鳴を上げた。
　男の方に視線を投げると、ヴィアザは、左手に構えた刀を振るった。
「がああああっ！」
　思いきり叫んで、斬られた男は息絶えた。
　ヴィアザは右手で、背中を探り、突き刺さっている剣の柄を握った。
　手が届いてよかったと内心で思いながら、右手に力を込めた。
「なにを、する気だ？」
「このままにはしておけん。邪魔なんだよ」
　溜息を吐きながらヴィアザが言い放つと、少しずつ剣が動き出した。
「正気か!?　かなり痛むだろうに、なんで表情が変わらない!?」
「俺は痛みに慣れているだけだ。これくらい大した傷ではない」
「説得力がまるでない！」