第十章 彼女の核となるモノ

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 ヴィアザは隠れ家に着くと、ベッドにセリーナを下ろした。 「大人しくしていろ」 「ありがとう」  セリーナはヒールを脱いで、踵を揃えて床に置いた。 「でも、いいの? あなたの方が重傷なのに」  セリーナは心配そうな顔をした。 「いいんだよ。俺は座る場所さえあればいい。ちょっと、着替える」  セリーナはうなずくと天井に視線を向けた。  クローゼットの戸が軋む音と衣擦れの音がして、しばらくすると、クローゼットの戸が閉まった。 「終わったぞ」  セリーナはその声を聞き、視線を戻した。  ヴィアザは新しいワイシャツを着ていて、細身のズボンを穿いていた。どちらも黒で、袖以外のボタンが外れていた。シャツの間から覗く包帯は、ところどころ赤くなっていた。 「嘘、吐いたでしょ? 二十年でそこまで傷だらけにはならないはずよ。あなたはいったいいつから、今の仕事をしているの?」  傷がかなり深かったのを思い知ったセリーナは、言わないでいたことを問いかけた。 「見せれば、バレると思った。お前の言う通り、二十年より前からやっている。今はそれしか言えない。それよりもお前、これからどうするんだ?」
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