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男がぼそっと吐き捨てた。
「そうね。あたしは、セリーナ。〝戦場に輝く閃光〟って通り名を持っているわ」
「そうか、お前があの……。俺はヴィアザ・ヴァンフォール。通り名は〝漆黒の狼〟だ」
「へぇ……」
セリーナはヴィアザを横目で見る。
見た目は二十八歳くらいか。無造作な黒髪は首のあたりで切られている。目の色は真紅で、瞳孔は黒で縦長。蛇のような目で、吊り上がった目つきをしている。シャープで端正な顔立ち。高めの鼻梁に、薄い唇。肌が異様に白い。節くれだった細長い指をしている。
服装はワイシャツに、細身の長ズボン。足首までの長いフードつきのマントで、革靴を履いている。身に着けているものはすべて黒だ。視線を落とすと一本の黒い剣か刀がある。だが、鍔がない。
「なんだ?」
ヴィアザと視線がぶつかった。
「いい男じゃない」
セリーナは笑いながら言った。
「褒め言葉、として受け取っておく。ちょっと場所を変えよう」
ヴィアザは苦笑し、テーブルに銅貨を置いた。
ポケットに突っ込んでいた黒の革手袋を嵌めると、立ち上がった。
セリーナも銅貨を置き、ついていった。
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