第十一章 通り名がふたつ

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「あたしも光は苦手よ。終わりがないというの? あなたの抱える闇には」  セリーナが嗚咽を噛み殺しながら言った。 「終わりなどない。俺の命ひとつで償えるとも思っていない。俺の両手は鮮血に染まりすぎて、誰かを想うことすらも、できないんだ。俺を縛る鎖からは完全に逃れられない」  ヴィアザは、低い声で言い放った。 「なんでっ! なんでっ! 自分が傷ついて痛くて辛いなら、どうしてそれを表に出さないのよ!」 「表に出すことを禁じたからだ。表に出したところで、話を聞いてくれる者などいなかったからな」  ヴィアザは相変わらず無表情で言ってのけた。 「なによそれ! そういうのは、罪じゃないのに! あなた……ヴィアザは、自分のために生きることを止めたの!?」  セリーナは怒りをあらわにしながら、名を呼んだ。 「そうだよ」  ヴィアザはセリーナを真っ直ぐに見つめた。  美しい赤い目には、なんの感情も浮かんでいなかった。  セリーナはその目で悟った。  ――ヴィアザは本当に、自分の人生を生きることを止めてしまった。 「っ!」  無だった彼の顔に、少しの驚きが混じった。
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