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「あたしも光は苦手よ。終わりがないというの? あなたの抱える闇には」
セリーナが嗚咽を噛み殺しながら言った。
「終わりなどない。俺の命ひとつで償えるとも思っていない。俺の両手は鮮血に染まりすぎて、誰かを想うことすらも、できないんだ。俺を縛る鎖からは完全に逃れられない」
ヴィアザは、低い声で言い放った。
「なんでっ! なんでっ! 自分が傷ついて痛くて辛いなら、どうしてそれを表に出さないのよ!」
「表に出すことを禁じたからだ。表に出したところで、話を聞いてくれる者などいなかったからな」
ヴィアザは相変わらず無表情で言ってのけた。
「なによそれ! そういうのは、罪じゃないのに! あなた……ヴィアザは、自分のために生きることを止めたの!?」
セリーナは怒りをあらわにしながら、名を呼んだ。
「そうだよ」
ヴィアザはセリーナを真っ直ぐに見つめた。
美しい赤い目には、なんの感情も浮かんでいなかった。
セリーナはその目で悟った。
――ヴィアザは本当に、自分の人生を生きることを止めてしまった。
「っ!」
無だった彼の顔に、少しの驚きが混じった。
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