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セリーナが身体を起こして、ヴィアザを抱きしめたからだ。
「なにをしている?」
「昨日のお礼よ。あたしよりも暗くて深い闇を、一人で歩いてきたのでしょ」
「ああ。そうだ」
「今じゃなくていい。いつか、ヴィアザが話したくなったら、昔話、聞かせて?」
セリーナはそっと、背を撫でながら言った。
「ああ、分かったよ」
ヴィアザは低い声で言った。
「あたしは、ヴィアザと一緒にいたい。こんなに優しい人、ほかにいない。名も知らぬ国民の恨みを引き受けて、自分のことなど放っておいて、戦い続けるなんてね。あたしは、孤高の戦士だと思ってる。ヴィアザは、誰よりも、命の重さを分かってる」
「……そうか。自分のことを、残酷なまでに、斬り捨てただけさ。俺は生きたかったからな。手段を選ぶ余地はなかったんだ」
ヴィアザは遣る瀬無い笑みを浮かべた。
「お疲れ様、ヴィアザ。あたしは多分、あなたに惹かれてる。どうするかは、ヴィアザが決めて。いつまででも、待っているから」
「なんだと……」
ヴィアザは言葉を失った。
「事実なんだもの、仕方ないじゃない。誰かを好きになるのは、罪ではないでしょ?」
泣きながら、セリーナは笑った。
その顔を見て、ヴィアザは思わず、セリーナを抱きしめた。
「その答えは、俺の過去を話すときまで、保留にさせてくれ。あと、これだけは言っておく。……ありがとう」
セリーナは泣きながら首を横に振った。
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