第十一章 通り名がふたつ

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 一人になってから、金を金庫に放り込んで、ワインを引っ張り出した。  木の杯も取り出して、呑み始めた。煙管に火をつけたところで、セリーナが顔を出した。  前回の依頼で怪我をした右足は、もう完治していた。 「なにか、依頼はあった?」 「ああ。嫁を殺されたんだと。城下町で肉屋を営んでいるようだが、裏でなにかをしているのは間違いないだろう」 「城下町って……。許可証がないのに、どうやって入るのよ?」  セリーナが尋ねた。 「それならある」  ヴィアザが立ち上がり、金庫の中を探ると、上等な紙を一枚取り出した。  それには、城下町許可証と書かれていた。 「初めて見たわ。それに、こんなしっかりした紙なのね」 「そうか」 「この国で一番栄えていると言っても過言じゃない場所……どんな感じなのかしら」 「いけば分かる」 「じゃ、明日の夜ね」  ヴィアザはその言葉にうなずいた。  セリーナが出ていった。  決行当日。ヴィアザとセリーナは城下町まで駆けていった。城下町の門番に許可証を見せたヴィアザは、それをセリーナに持たせて中へ。慌てて追い駆けた。
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