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第二章 ヴィアザの隠れ家
ヴィアザはボロボロの大きめの家の前で立ち止まった。
「ここだ。誰も近づかないし、落ち着いて話をするにはもってこいだ」
言いながら、ぎいっと軋むドアを開けた。
少し広めの部屋の真ん中にテーブルがあり、それを挟んでふたつの椅子がある。左側の壁際にはボロボロのベッドがあり、反対側にはボロボロのクローゼットと棚がひとつ。
中に入るや、セリーナが椅子に座った。
ヴィアザは向き合う形で椅子に座ると、テーブルにある蝋燭に火をつけた。
ぼんやりと明るくなった。
テーブルの隅に置いてある、年季の入った細身のダークパープルの煙管を手にした。
「構わないか?」
「ええ」
蝋燭に煙管を近づけて火をつけると、紫煙をふうっと吐き出した。
「それで、どうして俺を訪ねた?」
ヴィアザは、警戒心を剥き出しにして尋ねた。
「あなたに聞きたいことがあって」
「なにを?」
「まだあたしが子どもだったころ、二十年前くらいかな。一度だけあなたを見かけたことがある。あれからもう何年も経ったのに、見た目が変わっていない。それはどういうこと?」
「よく憶えていたな」
ヴィアザは苦笑した。
「それは、あなたがとても印象に残ったから」
セリーナは煙管が似合うなと思いながら、話を続けた。
「見た目が変わっていないことを、突かれるとはな。ここでの話は他言無用だ。いいな?」
その言葉にセリーナがうなずいた。
「酒場では言わなかったが、俺は通り名がもうひとつある。それは〝ヴァンフォール〟」
「通り名がふたつ!? ちょっと待って。誰もいないんじゃない? 通り名がふたつある人なんて。酒場で言わなかったのは、どうして?」
セリーナは驚いて、尋ねた。
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