第二章 ヴィアザの隠れ家

2/2
前へ
/48ページ
次へ
「ああ。ふたつ持つのは俺だけだ。〝漆黒の狼〟は誰に知られても構わない。だが、もうひとつの方は、隠しておく必要があった。軽々しく口にしていいものでもないからな」  ヴィアザは低い声で言った。 「そうだったのね。それについては誰にも言わないわ」  セリーナはうなずいた。 「もうひとつ、秘密を明かしてやる。俺は人間ではない。ヴァンパイア。吸血鬼だ。もうなん十年も人間の血を飲んでいない。その代わりに、ワインを呑んでいる。なに、高価なもんじゃない。一般街で普通に買えるものさ」  ヴィアザは煙管を見ながら目を細めた。 「本当にいるのね。吸血鬼なんて」 「驚くな、と言う方が無理だ」  ヴィアザは苦笑した。 「そうね。……国の中心ばかりが豊かで、貧困街なんて、生きるのに精いっぱいな人達が溢れている。同じ国の中なのに、ここまで違うなんておかしい」  セリーナは唇を噛んだ。 「そうだな。俺も、そう思う」 「ねぇ、手を組まない?」  ノックの音が聞こえてきた。 「ちょっと待て。その返事は、後にさせてもらうぞ」  セリーナが首をかしげた。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加