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重たい衣装を脱ぎ捨てた明を組み敷き、優はその姿をじっと見下ろした。長く白い耳に、愛らしい顔、そして細く白い肢体。抱いたら壊してしまいそうな明に、優は恐る恐る手を伸ばした。
温かな肌に触れると、紅く色づいた明の頬が綻ぶ。
「優さん、大丈夫ですよ。僕、覚悟できてます」
明に触れるのは、これが初めてではない。けれど、これが儀式だと言われたらやっぱり優しくしたいと思うし、明にとって思い出して幸せだと思える一夜にしたい。
「分かってる……けど……」
優はそっと体を倒し、そのまま明を抱きしめた。トクトクと早い心音が二人の間で響いている。
「明を愛してる。それを伝えたい」
「……伝わってます。優さんの体、全部がそう言ってくれてるから……僕も、愛してます」
明の腕が優の背中に廻る。小さな手で裸の背を撫でられ、優は明の首筋にキスをした。
「ありがとう、明」
耳朶を甘噛みし囁くと、明の肌が震え、粟立つ。怖いのかと思い、明の顔を見るが、その表情は安心したものだった。自分を信頼して全てを受け入れてくれている――傍にいようとしてくれている、それがなにより嬉しかった。
首筋にキスをして、そのまま鎖骨に強く口付け、赤く痕を残す。明を見上げると少し微笑んでいた。
「どうした? 明」
「ちょっとくすぐったくて……でも、好きにしてくれて、大丈夫です」
優さんのしたいようにしてください、なんて言われたら、優の中の凶暴な何かが暴れそうで優は大きく息を吐いた。それを何かマイナスの感情と捉えたのだろう。明の表情が曇る。
「……何か……」
「いや、違う!」
明が口を開いたと同時に優が否定する。それから明の髪を撫で、言葉を繋いだ。
「明が悪いんじゃないんだ。愛する人に『好きにして』と言われて冷静で居られるほど大人ではなくて……優しくしたいのに、できなさそうで怖いだけだ」
明の前ではカッコいい大人でありたい。明が憧れてくれる男であり続けたい。それなのに明の言葉ひとつでそれは簡単に崩れそうになるのだ。それが悔しかった。
けれど優の言葉を聞いた明は嬉しそうな表情を見せ、優の頬に指を伸ばした。
「優さんがどんなぼくでも愛してくれるように、どんな優さんでも、ぼくは好きです。大人じゃなくても……色んな優さんが見られるのは嬉しいから」
色んな優が見たい、だなんて言葉を言われたのは初めてだった。優に貼られたミスミグループの御曹司の肩書はとても大きくて、優を『三角優』として見てくれる人は少ない。親でさえ、跡継ぎとして見ていたのだ、他人が『三十二歳、男性』というどこにでもいる人間として見てくれるわけがないのも分かっていた。だからこそ、ひととの付き合いは浅く狭く保っていたのだ――自分が後でがっかりしないように。
「……明は、俺が社長じゃなかったとしても、好きになった?」
明の白い胸に顔を埋め、優が聞く。頭上からはすぐに、はい、と迷いのない答えが返って来た。
「……きっと優さんはどんな立場だとしても、ぼくを助けてくれたと思います。そんな優さんだから好きになったんです」
明がそう言い切ると、優の鼻孔にはふわりと優しい香りが届いた。明の香りだと分かり、優が顔を上げる。
「……うん。俺も、明がどんな姿でも好きになっていたと思う」
優はそう言って明にキスをする。明はそんな優の背中に腕を廻した。唇が離れ、ごく近くで明を見つめると、その顔が微笑む。
「……抱いてください、優さん。ぼく……優さんの赤ちゃん、産みたい」
「それは気が早いけど……まずは二人で家族になろう」
優はそう言うと、明に深く口づけた。そのまま明の体に手を滑らせ、明の中心を愛撫する。
「んっ……」
突然の刺激に驚いたのだろう。明の体がびくりと跳ねる。それでも優はそのまま愛撫を続け、胸にキスを何度も落とした。その度に明の体が熱くなり、力が抜けていくのが分かる。熟れたリンゴのように赤くなっていく肌に指を滑らせるだけで、明は言葉にならない声を漏らす。そんな明を見つめ、優はゆっくりと中心から後ろへと指を伸ばした。慎ましく閉じた後ろに指先をしのばせると明が短く悲鳴を上げた。
「大丈夫、そのまま力抜いていて」
優が明の耳元で囁き、指を進める。濡れた指で中を擦ると、明の腰が持ち上がる。
「やっ……そこ、やだ」
「感じすぎるか? だったらもっと触らなきゃな」
「……優さんのいじわる」
明がこちらを見て恨めしそうな顔をする。けれど優は止める気などなかった。もっと明を気持ちよくしてやりたい、自分のものにしたい。
「も、優さ……」
後ろの蕾が花開くように柔らかくなった頃、明は大きな瞳に涙を溜め、そう訴えた。優がそれに頷く。
「愛してるよ、明」
「ぼくも、です……優さん」
明がそう言って微笑み、優に向かって両腕を広げる。優はその腕の中に飛び込むように、明の中へと自身を埋め込んだ。
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