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この子たちが村にやってきて一番変わったのは食生活だと思う。
料理人をしていたという子と食い道楽というものをしていた何人かの子たちが協力して、マヨネーズを始めとした色々な調味料やそれを利用したレシピが大量に作られた。
これはナマモノだから売れないけど、今はジャムとかオイル漬けとか、いろいろな保存食を作る実験をしている。この村の人はもう以前の食生活に戻れそうにない。
そうだそうだ。それで旅立ちだ。
今、僕は高速の乗合馬車に乗っている。6人乗りの車内に3人。デュラはんは数には含まれない。流石に村と同じようにそのまま生で持ち歩くことはできないから手提げ鞄の中に入って僕の膝の上にいる。鞄を開いて中を覗けばデュラはんと目が合う……謎の状況。
旅か。
僕は教都コラプティオで生まれ育った。このキウィタス村とコラプティオしか行ったことがない。神父はいろんな村を回ることも多いから旅の心得は学んでいるけど、実体験はあまりない。そしてその機械の国、カレルギア帝国はコラプティオのある地域とは別の魔女様の領域にある。
「魔女様?」
「そう。あれ? デュラはんは村以外はあんまり知らないんだっけ」
「そうやなぁ。村の周りをウロウロしとったくらいかなぁ。その前もあんまデュラハンしてないねん」
デュラハンしてない?
そういえばデュラはんは転生してすぐにデュラハンの組合から逃げてきたんだっけ。組合? 自分で言ってて常識との乖離にくらくらしちゃうよ。
「首無し馬に乗って色々な人のところに行ったんでしょう?」
「まぁ血ぃぶっかけに行っとったけど好きでやってたわけやないで」
「わかってる。そういえばデュラはんの世界には魔法がないんだよね? これから行くカレルギアも魔力が乏しいんだ。だからデュラはんの元いたところに似てるかもしれない」
「おっ! ほんまに?」
デュラはんはにこにこ笑った。
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