私の国、赤と黄色のカレルギア

1/5
前へ
/146ページ
次へ

私の国、赤と黄色のカレルギア

 この『灰色と熱い鉱石』の領域で最も高いアストルム山中腹から世界を眺め下ろす。  木の生えぬ赤茶けてゴツゴツした岩山はその裾野でようやく黄色い砂と混じり始め、その合間にポツリポツリといくつかの町やオアシス、それから僅かな緑の集まりが点在している。  これがこの領域の南側の主な景色。  そしてそこからさらに先、かぼそく見える灰色の街道をにょろりと辿って地平線の少し手前まで目を移すと唐突に一本の線が引かれたように、そこから先が濃淡様々な緑色で埋め尽くされる。あそこが魔女の領域線だ。  あそこから先の緑は我が友『灰色と熱い鉱石』とは異なる魔女の支配領域。  ここはマギカ・フェルムと呼ばれる5人の魔女が統治する巨島。  島の真ん中にある魔女たちの共同統治領域を中心に、放射状に5人の魔女がそれぞれの領域を管理する。ここ『灰色と熱い鉱石』は最も古く、他の魔女の領域より少し狭く、島の北東部に位置する。  そしてこの領域内には3つの国が存在する。そのうちの1つがカレルギア帝国。  そして私はその第一皇女、リシャール=カレルギア。カレルギア第一機甲師団師団長。そして同団兵装開発部顧問。私の肩書きは他にも様々あるが、本日私はこの肩書きでここにいる。  とはいっても今は哨戒中で悠々としたものだ。部下がアストルム山を採掘しているのを見守っている。  アストルム山は城から見ると煙を吐く赤茶けた山にすぎないが、その内部には多くの鉱脈がある。今回の目的は3つ。1つ目は魔力伝達率の極めて高い鉱石の採掘、それから……。 「姫様! 7時方向高度プラス150に中型フレイム・ラフィノス。9時方向に旋回しつつ接敵。接触予測72秒後」 「私が迎え撃つ。お前たちは待機だ」
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加