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第一部・#01. あなたは、ぼくと恋愛をすればいい
その台詞を返されたときに、彼女には一瞬、意味が飲み込めなかった。
いまどきLINEをやらない男がいるとは。という思いと、ああ、やっと見つかった……という二つの感情が彼女の胸のなかで交錯する。彼女、藤河海鈴は、そうなんですね、と曖昧に答えた。
「……IDを持っていないということですか」
「持っていません」と目の前の男――佐藤が答える。「正直に言って、する意味が分かりません。疲れるだけじゃないですか。はっきり言っておれは、携帯電話すら持ちたくない。自宅にいるときはオフにして別の部屋に置いているくらいです。返事が来るとか既読がつくとか……気にするのはごめんなので」
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