#05. 孤独を癒すもの

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#05. 孤独を癒すもの

 親の離婚だけならばまだ耐えられたかもしれない。母は、父がいるかもしれない場所にいることすら嫌うようになり、実家にほど近い埼玉の某所に引っ越した。せんべいが有名な場所だ。  埼玉は、ダ埼玉だとかイジられもするが基本的には都会だ。ただ、転居したのがちょうど佐藤誠が中学三年生の夏であり、……微妙な時期でもあった。  先ず、方言が、まったく通じない。しかも、中学三年の秋という時期に転校した彼は、完全に、周囲から孤立した。喋れればくすくすと笑われる。よって自然と顔が赤くなり、赤面症に近い状態に陥った。学校では、先生にあてられたとき以外はかたくなに口を閉ざす日々。  母は、仕事で忙しく。家庭を顧みるどころではなかった。そして、彼のほうも、急遽進路を決め直さねばならず。勉強に打ち込む、孤独な日々が続いた。
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