22人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
そのよん:大炎上キャラ
羨望の余り自分の置かれている現在の境遇を延々と嘆きまくるロシュを無視し、リシェとスティレンは自分達の教室方面へ向かって歩いていた。
「…てか、良かったの?あれ」
あれ、とは当然先程まで会話していた保健医のロシュの事だ。
リシェは「別にいいんじゃないか?」と素っ気無く言うと、そのまま止まる事無く足を進めていく。本来なら絶対に彼に対して失礼な事など出来ないはずなのだが、こちら側は全く記憶が無いので仕方がない。
「あの人、お前に対してやけに執着するよねぇ。何なんだろ」
「知るか」
「さっきのさ、俺に対してSSRってどういう事さ?」
自分に言われた事は確実に把握するスティレンは、先程のロシュの発言を思い出してリシェに問う。とにかく自分に関しては目敏い。
「ラスも全く同じ事を言ってたんだけど何が言いたいのかさっぱり分からない。ラスに聞いてみたらどうだ?」
へえ…と眉を寄せる。
でも不思議と悪い感じがしないと思ったようで、スティレンはふふんとやけに得意気な表情を見せていた。
「まぁね、俺みたいな外見も良いし性格も申し分無いし、おまけに誰よりも美しいってなればさ。スペシャルどころか相当なレアキャラだと思うんだよね」
また始まった…とうんざりするリシェ。
彼の得意技のような自慢発言を回避する為に専用の耳栓でも買った方がいいのかもしれないと思わずにはいられない。
「聞いてるの、リシェ?」
「聞いてるよ…あぁ、聞いてる聞いてる」
絶対聞いてないだろ…と横目でじっとりと見てしまいそうになるが、スティレンは尚も続けた。自分が如何に素晴らしいのかを知らしめる為に。
「お前が仮にさ」
「あ?」
まだ話を続けるのか。
あまりの鬱陶しさに、リシェは感じの悪い反応を見せる。やめた方がいいとは思うが、どうしても相手の癖の強さに我が出てしまった。
「ゲームか何かのキャラを作るとするじゃん。当然俺みたいに完全無欠な美形キャラが必要になる訳さ。そうなった場合、俺をモデルにしてくれてもいいんだよ」
何故そうなってしまうのだろう。話が変な方向になっていくのを感じ、リシェは黙ったまま俯く。
彼の自意識過剰っぷりは完全に留まる事を知らない。大体、何故自分がゲームの作成に携わる事前提になるのか。
自分は作るよりは遊ぶ方が好きなだけなのに。
「そこまで言うならお前が自ら作れるようにすればいいじゃないか」
流石にこのキャラは自分がモデルですなんて言えば、大炎上間違い無しだろうと思う。
最も、彼の場合炎上しようがノーダメージかもしれない。
この図太いメンタルだけは見習いたい。
「何で俺がゲームを作らなきゃいけないのさ。俺はモデルが一番いいんだよ。さっきだってSSRって言われたし。キャラ化するなら凄く豪華な演出にして欲しいよね。俺に似合うように」
「どこまで自分本位なんだ」
ホログラムとかの効果とかいいよねー、と勝手に言う始末。
ラスやロシュが言いたいのとは意味合いが違う気がするが、もう面倒過ぎて何も言う気力が無くなっていく。
話に夢中になっているスティレンは、頭をかくりと垂れているリシェを横目で見ながら勝ち誇ったようにふふんと笑った。
「お前なんて精々ノーマルくらいの価値だろうね、ノーマル」
話について行けなくなったリシェは、肩を落としながら「別にそれでもいいよ…」とうなだれていた。
最初のコメントを投稿しよう!