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「そういえば、匠斗さんとカヤさんは?」
どこかで片づけでもしているのだろうと思っていたが、工房の中はずっと静かなままだ。
「二人ならもう帰ったよ。家で家族ともパーティするんだってさ」
「家族……」
家にいる母は、今何をしているだろう。真っ暗な部屋で、テレビだけがついている光景が浮かんだ。
「私も帰ろうかな。今日くらいは、楽しい気分になってほしいし」
どこかで小さなケーキでも買っていこう。私だけ楽しんでいるのは、なんだか申し訳ない気がしてきた。
「じゃあその前に、ちょっと来て」
ユキくんはごく自然に私の手を取り、奥の部屋へと足を向けた。昨日も手を引かれたけれど、まだ慣れないし慣れる日が来る気がしない。
「何かあるの?」
「見たらすぐにわかるよ」
そうだった、こういう時彼は一切説明してくれないのだ。でも、心なしかいつもより表情が浮かれている気がする。彼のことだから、貴重なピアノが手に入ったから見せたい、とかだろうか。
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