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真琴は花火を期待して眠りについたのだが、目が覚めると土砂降りの雨。
それは日が落ちても止む気配はない。
「雨、やな」
「…………ん」
「止みそうにないな」
「…………ないね」
縁側で膝を抱えてすっかりしょげた真琴がかわいそうになって、つい、玄関先で一本だけ――線香花火に点火して――静に怒られた。
「線香花火ぐらいええやん」
「阿呆。子供に火遊びを教えるな。よりによって玄関先で花火をやるか?」
「ちょっとだけや」
「一本だけだもん」
真琴と二人で口を尖らせたら、目を吊り上げた静に説教された。
最後にどっちが子供だと苦笑した静の顔が忘れられない。
いつの間にか、正吾の隣に真琴がくっついている。
(年の離れた妹、みたいなもんやろか)
結局、花火ができたのは、さらに数日先となった。
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