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風俗店やラブホテルが密集するそこを堂々と歩く未成年。誰もが暗黙の了解のように目を逸らし、軽く避けるようにして道を開ける。そんな大人達を横目に馬鹿馬鹿しいと思いながらも気分は良かった。
「君達、ちょっといいかな」
ふと、後ろから声がかけられる。瞬間周りの空気が張り詰め、逃げるように人々は足早にそこから離れようとする。ゆっくりと振り返るとそこには一人の男。
それに意識を向けたのは一瞬でさほど興味も湧かない俺はまた歩き出す。後ろで何やら騒がしさを感じるが特に気にはならなかった。
「っ涼夜さ、」
誰かが俺の名前を呼んだ瞬間グッと強い力で引っ張られた右腕。強制的に振り向かされた先には先程の男。不快な感覚が鬱陶しくて。
「あ゙?」
湧き上がる感情を抑えることなく男を睨みつけ静かに発した声は思うより低かった。Glareを纏ったそれにそこにいる数人が当てられたのか倒れる音がする。それと同時に目の前にいた男も数歩後退りふらついて座り込む。男の表情には恐怖の色が滲んでいた。
「へぇ……Subなんだ。お前」
俺の言葉にひゅっ、と喉を鳴らした男はガタガタと体を震わせていた。それでも俺から目が逸らせないのかじっと目は合わさったままだった。私服警官だったのかなんなのか、俺達のことを知らなかったらしい憐れなそいつをじっと見下ろす。
「なぁ」
その言葉は男に向けて言ったものではなかったが目の前のそいつはビクッと体を震わす。
「お前ら何してんの」
しん、と静まり返っているその場にどれだけ小さくても俺の声ははっきりと聞こえた。ただ黙って見ていただけだった俺の仲間達はビクリと肩を揺らす。
「連れてけ」
数人が目の前で震えている男を掴み上げ無理矢理何処かへと連れ歩き出す。大人が子供にいいようにされている姿が可笑しくて反吐が出る。これから何をされるかなんて俺の知るところではない。興味の一切も無くなった俺は何事もなかったようにまた歩き出す。
先程よりもあからさまに避ける大人達を横目に目的の場所へと歩いていく。ふと脳裏に浮かぶのは先程の一連の流れを見ても何の反応も示さなかった湊の姿。その姿に自然と口元には笑みが浮かんだ。
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