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「勇者様を呼べっ!」
「魔物が出たぞっ!!」
「勇者様はどこにお泊りか!?」
「旅館を片っ端からあたれ!」
「街の左端から聞いてくるからよ、お前、右端、お前は中央通り、お前は王宮前から聞いてこい!」
0時近く、日をまたごうかという頃だった。安宿のベッドの中で眠りに落ちかけていたのに、街が騒々しくて目が覚めた。
3階に泊まっていたので、何事かと窓から外をのぞいてみる。松明を持った人々が夜の街の通りで慌てふためいていた。
「魔獣の襲撃だ!」
「東の農場がやられてるらしいぞ!」
「十匹はいるらしい。招集がかけられている、戦える者は武具を持ち農場へ向かえ!」
「勇者様が滞在してるらしい、助けを願おう!」
大通りに面するのは3~5階の高層の建物だった。そこから人々がわらわらと溢れだしていた。
「勇者様を呼べ!」
この叫び声が聞こえて、身体から汗がしたたり落ちる。動悸がはやくなる。
ヤバい、ヤバいよ、どうする? きっと来る。助けてくれって来る。どうする? 今なら混乱に乗じて逃げられるかも。だって、無理。10匹なんて無理。倒せない。ああ、ちくしょう。どうして、自分を知ってる奴がこの街にいるかな!!
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