10.ライバル

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「お前大丈夫か。なんか前よりどんどん重くなってね?」 「だって紗良がどんどん可愛くなるんだから仕方ないだろ」 俺と逸のふたりしかいない喫煙所で、目の前の男は躊躇なく惚気ける。 その言葉をそのまま本人に伝えられたらいいのだけれど…まぁ、立場的に無理なんだろうな。 それにしてもこの男、かなり拗らせている。 「もっとドンと構えてないと嫌われるぞ。余裕のある男の方がモテるんだから」 「分かってる。だから紗良の前では余裕しか見せてないつもり」 「裏では1ミリも余裕ないのにな。なぁ、それ以上依存すんなよマジで」 「……分かってる」 本当に分かってんのかこの男。俺が見る限り、もう手遅れなんだが。 「てか、毎回これ聞くけど…さすがにやったよな?花火大会一緒に行ったくらいだし」 「……」 返事をしない逸を見て、全てを察した。 逸がここまで奥手とは…どうしたらここまで拗らせられるんだよ。 「安心して。キス()したから」 「むしろキスしたのにその先に進まなかったの凄いな。お前のその下半身、もう死んでんじゃね」 「そうだな、仙人を超えるかもしれない」 「どこ目指してんの」 「だって紗良が尊すぎるから…」 そう言って、一線を超えるのが怖いだけなんじゃねえの?だって、今でこれだ。きっとこれ以上深い関係になったら、離れられなくなるに決まってる。 「逸…俺とお前じゃ立場も何もかも違うから、全部は理解してあげられないかもしれないけど」 「……」 「頼むからひとりで抱えんなよ」 ありがと。力なく放った逸の横顔は、やっぱりどこか無理をしているように見えた。 もう、昔みたいな荒れた逸は見たくない。 ここで働き出してから、逸はかなり柔らかくなった。それに加え、岬さんに出会ってからは幸せオーラすら出てる。 それなのに…半年後、逸は一体どうなってしまうんだろう。 政略結婚なんて、なくなってしまえばいいのに。
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