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「…マジであいつ何なんだよ。酒弱いなら先に言えっての」
「逸生さんと飲めて嬉しかったんじゃないですか?坂本さん、何だか楽しそうでしたよ」
「どうだか」
帰りの車内、助手席で爆睡している坂本さんを後ろから見つめながら、逸生さんは不服そうにブツブツと愚痴を零していた。
なぜ坂本さんが爆睡しているのかというと、展示会のあと三人で寄った居酒屋で、酔い潰れてしまったからだ。
最初の注文の際、ビールを頼んだ逸生さんに続いて「俺も飲んでもいいですか」と尋ねた坂本さんに、何だかんだ優しい逸生さんは「何でも好きな物頼めよ」なんて返したのはいいものの。彼は1杯目のジョッキを空にした瞬間から、みるみる顔を真っ赤にさせた。
そして食事が終わる頃に酔いがピークに達したらしく、先程助手席で力尽きてしまったのだ。
「ビール1杯で顔真っ赤にするやつが、普通上司の前で飲むか?」
「普段接待では飲まないって言ってましたね。それだけ私達に心を許してくれたんですね」
「そんなこと頼んでねえけどな?むしろもっと控えめに来てほしかった」
「逸生さん、なんでそんなに坂本さんに厳しいんですか。彼は逸生さんのこと、ずっと褒めてましたよ」
「だって、まず名前が嫌だ。強すぎる」
「確かに強そうですね。お酒には弱かったですけど」
専属ドライバーに聞こえないよう小声で会話をしていれば、逸生さんはそっと私の手に自分の手を重ねる。
「…それに、お前らの距離が近いから」
「え?何か言いました?」
「何でもない」
指を絡め取られ、さすがにハッとした。
いつもは車内でこんなことしてこないのに。逸生さんも酔っているのだろうか。
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