10.ライバル

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・ 「…マジであいつ何なんだよ。酒弱いなら先に言えっての」 「逸生さんと飲めて嬉しかったんじゃないですか?坂本さん、何だか楽しそうでしたよ」 「どうだか」 帰りの車内、助手席で爆睡している坂本さんを後ろから見つめながら、逸生さんは不服そうにブツブツと愚痴を零していた。 なぜ坂本さんが爆睡しているのかというと、展示会のあと三人で寄った居酒屋で、酔い潰れてしまったからだ。 最初の注文の際、ビールを頼んだ逸生さんに続いて「俺も飲んでもいいですか」と尋ねた坂本さんに、何だかんだ優しい逸生さんは「何でも好きな物頼めよ」なんて返したのはいいものの。彼は1杯目のジョッキを空にした瞬間から、みるみる顔を真っ赤にさせた。 そして食事が終わる頃に酔いがピークに達したらしく、先程助手席で力尽きてしまったのだ。 「ビール1杯で顔真っ赤にするやつが、普通上司の前で飲むか?」 「普段接待では飲まないって言ってましたね。それだけ私達に心を許してくれたんですね」 「そんなこと頼んでねえけどな?むしろもっと控えめに来てほしかった」 「逸生さん、なんでそんなに坂本さんに厳しいんですか。彼は逸生さんのこと、ずっと褒めてましたよ」 「だって、まず名前が嫌だ。強すぎる」 「確かに強そうですね。お酒には弱かったですけど」 専属ドライバーに聞こえないよう小声で会話をしていれば、逸生さんはそっと私の手に自分の手を重ねる。 「…それに、お前らの距離が近いから」 「え?何か言いました?」 「何でもない」 指を絡め取られ、さすがにハッとした。 いつもは車内でこんなことしてこないのに。逸生さんも酔っているのだろうか。
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