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みずほ先輩はなぜか怒ってる
その日、生徒会室に姿を現したみずほ先輩の表情は、まさに雷鳴を轟かせる暗雲のごとし。
俺は不穏な空模様を察して背筋をしゃんと伸ばす。その間、たった0.3秒。これぞまさに下僕反射だ。
しかし美人が怒るとそら恐ろしい。怒りの迫力が三割増しになるし、いやおうなしに自分に非があると思わせられる。
なぜみずほ先輩はお怒りなのだろうか。
しかも、心当たりのない俺に向い仁王立ちになり人差し指の切っ先を向ける。
「かつき君、これからわたしの問題を解いてちょうだいねっ!」
「もっ、問題ですかっ!? 知っての通り、俺馬鹿ですけどぉ」
「そんなことわかってるわよ! でも、どうしてもかつき君に解いてもらいたい問題なの!」
切羽詰まった表情だが、その意図は不明である。しかし問題を解かなければ五体満足で生徒会室から抜け出せない予感がする。覚悟を決めて首を縦に振る。
「よっしゃ、俺も男だ、受けて立ちます!!」
両足を広げてスタンスを安定させ、右腕を前に差し出す。戦闘ポーズでみずほ先輩を迎撃する。
みずほ先輩はすかさず問題を繰り出す。
「じゃあいくわよ。あなたは三人の女の子と一緒に冒険をしていました。リーダーのかつきくんが先頭で、女の子三人が後に続き、縦一列に並んで進んでいます」
「おおっ、異世界ハーレム設定じゃないっすか!」
「ほら、まずはその発想がさっそく危険水域よ! やっぱりきみは邪念の塊なのね!」
みずほ先輩はつやつやの頬をぷーっと膨らました。しかし、何が危険水域で何が邪念なんだかさっぱりわからない。
「ところで、その女子三人って誰なんすか。願わくば美形のエルフ(♀︎)とかがいいっす!」
「期待に添えなくて申し訳なわね。でも、がっかりはさせないわ。――まず、かつき君のすぐ後ろ、二番目はこのわたし。かわいいかわいいみずほちゃんよ!」
なぜだかわからないが、この問題はみずほ先輩が登場するらしい。
「みずほ先輩……いま、なにげに脚色の形容詞をぶっ込んできましたね。しかも二連打で」
「きわめて適切かつ的確な表現よ!」
「そこまで言われるともうどうでもいいっす。――で、次はなんて子なんすか」
「その後ろ、三番目の女の子は青葉さん。かつきくんの同級生よ」
「あっ! 陸上部のあの子っすよね」
またもやリアルの人物だ。青葉さんは三か月ほど前から交流が増えた体育会系のクラスメート。
「そして一番後ろが一年生の愛美ちゃん。図書委員やってる子よ、知ってるわよね」
「あっ! あのメガネっ子っすよね」
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