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二番目のみずほ先輩
入学早々、俺は生徒会の一員となった。
部活の勧誘会で行き場なくさまよっていた俺に目をつけたのがみずほ先輩だったのだ。
「そこのイケメ……新入生のきみ! 生徒会に入らない? 内申点が上がるとかいろいろお得よ!」
「いや俺、別にいいっす。ガチで取った点数にしか価値を見出せない男なんで」
「はい、名言いただきましたー! じゃあ試験対策は任せといて!」
「あっ、いや遠慮します。俺、他人の通った道は歩かないって決めてるんで」
「ゴーイングマイウェイならぬ強引にマイウエイなのね! あなた、天性の生徒会属性に違いないわ! 三年にひとりの逸材よ!」
身の危険を感じ逃げようとしたが、みずほ先輩の自動追尾は俺を捉えて離さない。
「断りまーす! 他人のために身を粉にするなんて、俺の性分じゃないっす」
「じゃあ、これならどうだ! 生徒会の男子は女子にモテる可能性が大!」
「まじっすか! 即決します!」
悩みに悩んだ(?)俺は期待を胸に生徒会入りを決意した。しかし早々に、みずほ先輩の直属の下僕と認定された。
「かつき君、あなたはフリーなようなので、これからわたしと付き合ってもらいます!」
どんな役回りか知らないが、猫の手よりも頼りない俺の手を借りるなんて、よほど人手が必要なのだろう。焦りを反映してか、彼女の頬はひどく紅潮している。
「あ、構わないっすよ。俺、フリー(ひまの意)っすから!」
快諾と同時にみずほ先輩は拳を握り奇妙なガッツポーズを決めていた。その様子を見て俺は思った。みずほ先輩は下僕を確保し喜んでいらっしゃるのだと。
以来、きまって週末に呼び出しがかかった。
俺はみずほ先輩の指示により、買い物やら食事処やらアミューズメントパークやら、さまざまな取材に同伴することになった。
生徒会の地域広報を担当していたのがみずほ先輩だったからだ。しかし、校外のみずほ先輩は妙に浮かれていて平日の姿とはギャップがあった。
下僕を従えることで日々のストレスを発散させていたに違いない。いやはや生徒会とは難儀なものだ。
しかし生徒会長選挙のときの演説は凄まじかった。
凛とした佇まい、圧倒的に説得力のあるマニフェスト、そしてプレゼン中に魅せる鮮やかな笑顔。有力な金持ちの候補者たちを跳ねのけて、生徒たちの圧倒的支持を獲得した。
そして、みずほ先輩は生徒会長に選出された。才色兼備の彼女の存在感は不動のものとなった。
そんなみずほ先輩がなぜ俺のようなモブを下僕に、という疑問はいまだに拭えていない。
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