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首を横に大きく振りながら、知り合いなのかと思って必死に考えてたわたしの時間返して欲しいと本気で思った。
見ず知らずの大人の男の人に声をかけられて、何故か質問されまくって、何故か焦って、何故か謝る事になって。そんなわたしの心の中を知るはずもないその人―――カイさんは、悠長に煙草を咥えている。
「なにかあったの?」
「………」
「なんで泣いてるの?」
瞬間、息を飲んだわたしの頬に一筋の涙が伝った。カイさんという人の突然の登場で、一瞬だけ現実を忘れられた気がしたけれど、わたしを現実に引き戻したのも現れたカイさん本人だった。
綺麗な顔して、なんなの。いや、確かに絵になるような整った顔しているけれど、今は関係ないんだった。
初対面なのに、なんてデリカシーのない人なの。いきなり話しかけてくるし。初対面なのに、初対面じゃない風に装ってくるし。当たり前のように隣に座って来るし。
泣いてるのだって、わかってただろう。わかっていて、話しかけて来たのだろう。なんなの、この人………。
「なぁ、答えろよ」
思わず視線を逸らしたわたしの隣のカイさんは、まだわたしを見つめている。その視線を、ひしひしと感じる。
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