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初対面のカイさんに答える理由はない。わたしの心の中に勝手に入って来ないで欲しい。
「……泣いて、ないです」
「泣いてるだろ」
「…泣いてない」
「泣いてるってば」
「泣いてないし、関係ないと思います!」
「関係はないけど…」
呟くようにこぼしながら、短くなった煙草をコンクリートに押し付けて消したカイさんがゆっくりと立ち上がる。それをぼんやりと眺めていると、カイさんの手がわたしに伸びて来たかと思うと、そのまま腕をぐいっと引き上げられた。
「送ってやるから来いよ」
「え?ちょっ……」
戸惑うわたしの手を引いて歩き出したカイさんに、ようやく自分はヤバい状況なんじゃないかって危機感が芽生えた。初対面のよく知らない人に手を掴まれて、どこかに連れて行かれようとしてる。
いや、送ってくれるらしいのだけれど、本当にそうなのかどうかわからない。はじめまして、なのに。そんなわたしに何故こんな風に構うのか意味がわからない。
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