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スラッとしたカイさんの背中を追いかる。さほど明るくない暗めの茶髪が印象的な、歩くだけで様になる素敵な大人の男の人だ。 どこからどう見ても大人なカイさんが、どこからどう見ても女子高生のわたしみたいな小娘を相手にするなんておかしい。絶対におかしいと思う。 右手はポケットに入れたまま、左手でわたしの右手を握って斜め前を歩くカイさんに何の抵抗もしないまま、もう大通りがそこに見えている。 歩き出してからわたしに振り返る事もなく、大通りを目指して歩いているこの人から、どうやって逃げ出そうか頭をフル回転させて考える。 わたしはただ交差点にいただけだ。確かにウロウロするな、と言われた場所ではあるけれど、この人に迷惑はかけていない。 〝襲われても文句言えないよ?〟ってことは、わたしを襲うつもりなのだろうか。いやでも、カイさんは大人でわたしは子どもだ。……それは、関係ないか。世間知らずのわたしでも、コータさんのおかげでそれなりにそういう事はわかるつもりだ。 逃げなきゃいけない。そう思うものの、このままどこかに連れて行かれちゃってもいいかな、なんて考えてしまう自分もいた。そうすれば現実から離れられる。 今の見たくない現実を見なくていい。サキ姉はもういなくて、その所為で変わってしまったコータさんを見なくていい。 いっそうわたしを殺してくれないかな、なんて考えてしまうわたしは、きっとどうかしている。 大通りに出ると、路上に停まる漆黒の車がカイさんの背中の向こうに見えた。いかにもヤバそうな雰囲気の漂う高級の部類に入るであろう車だった。
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