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その漆黒の車の傍らには、車体に凭れかかって煙草を吸っている金髪の男の人がいて、近付いて行くカイさんとわたしに気付いたらしいその人は煙草を消してから、再びこちらに視線を向けた。 少し驚いた顔をしているようにも見える金髪の人と、視線が重なる。何故か見つめ合ったまま、距離はだんだんと近付いていく。 金髪の男の人の前で足を止めたカイさんは、同時にわたしの手を離した。 「どーゆー状況?」 わたしからカイさんへと視線を移した金髪の人は、キョトンとした顔で問いかける。それから、カイさんとわたしに交互に瞳を動かした。 意味がわからない、って雰囲気を金髪の人はわかりやすく表情に出しているのだけれど、カイさんは涼しい顔をちっとも崩さなかった。 「なにが?」 「まさか誘拐?人質?」 「拾っただけだよ」 「拾った?どこで?」 「家の近所で」 わたしを置き去りにして、進んでいく会話。しかも、誘拐だとか、人質だとか、拾っただとか、物騒なことを好き放題に言われている。
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