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不意に金髪の人が顔から笑みを消した。今の今まで困惑したような顔をしていたのに、急に真剣な眼差しを向けられて焦る。
「……その子さぁ、」
「なに?」
「コータ先輩が可愛がってる子じゃねぇの?」
「……コータ?」
コータさんの名前が出て、ドキッとした。わたしの表情が変わった事に気が付いたらしいカイさんは暫く黙ってわたしを見つめて、
「……なるほど」
なにかに納得したように頷く。けれど、それ以上は何も口にしなかった。黙って車の後部座席のドアを開いた。
振り返ってきたカイさんがわたしに〝乗れ〟と言わんばかりの視線を向けたけれど、さすがに乗る勇気はなくて、
「帰ります」
小さくそう呟くように口にしてから、頭を下げて逃げるように走り出した。
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