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座った縁石が驚くほど冷たい十二月。真夜中の交差点の片隅に腰を下ろし、冷たくなった顔をマフラーに埋めながら、人通りも車通りもほとんどなくなった交差点を眺める。 大通りから少し入ったところにあるこの交差点を、月明かりと街灯の小さな明かりだけが照らしていた。大通りを走る車の音が聞こえ、そのヘッドライトの明かりがチラチラと視界の片隅に見える。 時々、暴走族とも思えるような改造車や二輪車の爆音がして、何を言っているのかまでは聞き取れないけれど何人かの大きな声も聞こえた。 〝昼間はいいけど、夜はひとりで通るな〟 前にそう言われたことがある。この場所だけじゃない。街には近寄らない方がいい場所や、通らない方がいい場所がたくさんある。 煌びやかなネオン街から少し離れた薄暗い交差点に今はもう何の傷跡もないけれど、わたしの時間はここで止まった。 ―――今日で二週間になる。毎日毎日、ここに来ては数時間をここで過ごす。 学校に行く前。学校の帰り。溜まり場に行った帰り。今日みたいに眠れなくて、真夜中にこっそりと家を抜け出して来ることもある。 一ヶ月前、わたしの大好きなサキ姉がこの交差点で事故死した。わたしの受け入れられない現実。 ひとりぼっちだったわたしを救ってくれた人。孤独だったわたしに居場所を与えてくれた人。 わたしに今があるのはサキ姉のおかげだ。
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