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溜まり場に集まる人たちの中には本当にヤバい人もいるらしく、〝アイツには近付くな〟とか、〝話しかけられても絶対に答えるな〟とか、溜まり場に通うようになってからコータさんにはだいぶ言い聞かされた。 能天気そうに見えるのか。危機感がなさそうに見えるのか。 わたしに口うるさくするコータさんを見る度にサキ姉は、〝コータは心配性なの〟と呆れたように笑っていた。けれど、その時の表情が優しかった事をよく覚えている。 そんなサキ姉をコータさんがいつも愛おしそうに見つめていた事も、わたしはよく知っている。 心配性なコータさんは溜まり場事情だけでなく、繁華街事情についても色々と教えてくれた。〝繁華街のアッチ方面には行くな〟とか、〝あそこのコンビニには夜は行くな〟とか。 わたしが通っている交差点も、そういう場所だったりする。何度も行くなと言われた場所だ。今はそんなことよりも、ただここにいたかった。 受け入れなきゃいけない現実をまだどうしても受け入れられなくて、いつもここに来てしまう。 あんなに心配性なコータさんがついていながら、どうしてこんなことになってしまったのだろう。コータさんにも想像出来ないような出来事だったのかもしれない。 気が付いたら真っ暗になってたり、いつの間にか夜が明けて陽が昇ってたり。時間を忘れてそひたすら泣いていた。
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