詩作

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詩作

目覚まし時計と化したスマホを静め 万に届かない数字の羅列をスクロールさせる 今 何処かで誰かが詩を作ってる 別に俺じゃなくても良いだろうと 記憶の友人にうそぶいて 枕にしていた西脇順三郎を睨む ハードカバーのそいつを持ち上げるパワーが 今は足りないと苦笑しながら 鳴り響くスマホを静める 今 何処かで誰かが詩を作ってる 割り算の不完全さを証明する方法を悩んでいた 微睡みの残骸を追い払い 今からの行動プランを組み立てる 人混みに紛れる勇気を慎重に積み上げていた やかましいスマホをタップし けたたましい静寂が周囲に立ち込める 今 何処かで誰かが詩を作ってる 詩の作り方の教本が足許に転がる うるさいスマホを黙らせて いつか作れるだろう詩を思う 今 何処かで誰かが詩を作ってる でもそれは俺じゃない そうその誰かは俺じゃない そしてそれはきっと名作だと思う そう言ってる今も 何処かで誰かが詩を作ってる
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