その星の名を呼ぶものは

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 まばゆい光が走り、エトはまぶたを閉じました。  まるで真昼のように空が輝くなか、ノヴァの言葉を聞いたような気がしましたが、目を開くとそこは教会の祭壇前。誰もいないまっくらな礼拝堂に、ポツンと立っていました。  耳を澄ますと、ちょうど最後の鐘が鳴りおわるところで、エトはあわてて外へ出ます。  しんと静まった、いつもの夜。  他の子どもたちもさすがに寝てしまったようで、明かりも落ちていました。  ――わたし、夢を見ていたの?  寒さをしのぐために、こっそり礼拝堂に入り込んでいたのでしょうか。  ふとカバンのふくらみに気づいて覗いてみると、入れてあったはずのリンゴのかわりに、大きな瓶があります。月の光にかざしてみると、瓶の中には、たくさんの金平糖が詰まっているではありませんか。 「なんだ、エトか。遅かったじゃないか。星は持って帰ってきたんだろうなあ」  アルコールの臭いとともに、教会守がふらふら歩いてきました。  エトが瓶づめを持っているのを見つけると、それを取り上げます。 「食い物でもいいとは言ったが、星は星でも、星型の菓子とはおそれいった。どこのどいつか知らないが、洒落たことをする輩もいるもんだなあ。まあ、いい。これで勘弁してやろう」  取り返す勇気もなく、エトはすごすごと部屋に戻ります。  たくさんの子どもたちが寝転ぶすきまに身体をつっこんで、布団をかぶって眠りました。  翌朝、町では昨晩の大きな光が話題となりました。  空を覆う巨大な樹木を見たというひともおり、あちこちの家の庭に落ちていたリンゴとともに、流星群の夜に神さまが復活なされたのだと囁かれました。  しかし、無数の星が流れたあとに新しい星が見つかったというニュースのほうがずっと騒がれて、神さまのはなしは、小さな町のひとだけが見た奇跡なのだということになったのでした。
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