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事故で父と母を亡くしたエトは、三年前から教会の孤児院で暮らしています。
エト自身も事故でケガをしているため、七歳という年齢もほんとうかどうか、よくわかりません。破れてしまったマフラーにあった刺繍から、名前を『エト』と推測したぐらい、エトはきちんと自分のことを覚えていませんでした。
孤児院は貧しい暮らしをしているので、自分のことは自分でしなければなりませんし、子どもたちは小さいながらも町で仕事をしています。
靴を磨いたり、お皿を洗ったり、配達をしたり。
そうしてお金を稼いで、暮らしています。
ところがエトはといえば、ほんのすこし片足を引きずっているものですから、他の子どもたちのような仕事ができませんでした。
――わたしはいつまでたっても、星の恵みを受け取ることができないんだわ。
日も暮れ始めた町を歩きながら、エトはためいきを落としました。
古くから伝わる神話になぞらえて、この町では、なにかをなして報酬をもらうことを、星の恵みといいました。星は、神さまが与える銀貨なのです。
外の仕事はまんぞくにできないものですから、エトはもっぱら教会の手伝いをしています。そうじや食事のしたくなど、こまごまとしたことがエトの仕事でした。
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