その星の名を呼ぶものは

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 エトは空を見上げました。  ちかちかと星がまたたいています。こんなにもたくさん星はあるのに、エトの手にはひとつとして落ちてきません。背の低いエトがどんなに手を伸ばしたところで、届くこともないでしょう。  もうあきらめてしまって、どこか風をしのげるような場所を探して、朝まで待つべきでしょうか。  エトが隠れ場所を探すため、建物のあいだにある道にはいったところ、キョロキョロとあたりをみまわしている男のひとがいました。  肩のうえで切りそろえたまっすぐな髪は赤銅色。外套も羽織らずに、黒いシャツとズボンを着ています。  ひょろりと長い手足で、まるで長く伸びた影が立ち上がったように見えました。  おどろいて足を止めたところ、物音に気づいたそのひとが振り返って、エトを見つけて笑います。 「やあ、よかった。ひとがいたよ」 「……あなたは、だれ?」 「わからない。僕は名前を探しているんだ。たぶん、落っことしてしまったから」  おかしなことをいうひとです。  名前を落としてしまった、なんて。 「僕の名前がどこにあるか、知らないかい?」 「ごめんなさい、わからないわ」 「ならば、いまから降ってくるのかもしれないなあ」 「降ってくる?」  黒い服の青年は、空を見上げました。雨も雪も、降りそうにはみえません。  降るといえば、今朝の新聞に、流星群の記事が載っていました。  今日は、十年にいちど、たくさんの星が流れる日なのだとか。
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