10人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
流れ星には、たくさんの言い伝えがあります。
星は、人間の命。
死んだひとは空に上がって星になり、流れ星となって落ちてきて、また生まれてくると、神話は伝えます。
そして、今日のように、たくさんの星が降る日は、より大きな存在が生まれる日。
死んで星になった神さまが復活される日なのだと、言われているのです。
「ねえ、小さなお嬢さん。僕と星を捕まえに行こうよ」
「なんですって?」
「僕は名前を取り戻さないといけない。そうしないとたぶん帰れない。そのためには、星を捕まえないといけない、と思うんだ」
星を捕まえないと帰れない。
その言葉は、エトのこころにかさなりました。
エトだって、星を手にしなければ、帰ることができないのです。
「わたしも星がいるの」
「ならば一緒だね。そうか、キミも名前を探しているんだね」
「――わたしは、エトよ」
「でもそれは不完全だ。今のキミは半分に見える。でも僕も半人前のヴォワラクテだから、ふたりで一緒に名前を見つけよう」
「ヴォワラクテですって?」
「そうだよ、僕はヴォワラクテのひとりだ。それだけは覚えている」
星の神さま。
星を渡り、星を巡り、星を操ることができるヴォワラクテ。
絵本に出てくるヴォワラクテは、キラキラのラメ入りのスーツを着た髭の生えた紳士ですが、エトの前にいるのは、くたびれたようすの冴えない青年です。
つい疑いの目を向けてしまったエトに、ヴォワラクテを名乗る青年は、背中をまるめ、情けなさそうに眉を下げました。
最初のコメントを投稿しよう!