その星の名を呼ぶものは

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 流れ星には、たくさんの言い伝えがあります。  星は、人間の命。  死んだひとは空に上がって星になり、流れ星となって落ちてきて、また生まれてくると、神話は伝えます。  そして、今日のように、たくさんの星が降る日は、より大きな存在が生まれる日。  死んで星になった神さまが復活される日なのだと、言われているのです。 「ねえ、小さなお嬢さん。僕と星を捕まえに行こうよ」 「なんですって?」 「僕は名前を取り戻さないといけない。そうしないとたぶん帰れない。そのためには、星を捕まえないといけない、と思うんだ」  星を捕まえないと帰れない。  その言葉は、エトのこころにかさなりました。  エトだって、星を手にしなければ、帰ることができないのです。 「わたしも星がいるの」 「ならば一緒だね。そうか、キミも名前を探しているんだね」 「――わたしは、エトよ」 「でもそれは不完全だ。今のキミは半分に見える。でも僕も半人前のヴォワラクテだから、ふたりで一緒に名前を見つけよう」 「ヴォワラクテですって?」 「そうだよ、僕はヴォワラクテのひとりだ。それだけは覚えている」  星の神さま。  星を渡り、星を巡り、星を操ることができるヴォワラクテ。  絵本に出てくるヴォワラクテは、キラキラのラメ入りのスーツを着た髭の生えた紳士ですが、エトの前にいるのは、くたびれたようすの冴えない青年です。  つい疑いの目を向けてしまったエトに、ヴォワラクテを名乗る青年は、背中をまるめ、情けなさそうに眉を下げました。
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