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5分ほどして、涼くんがやって来た。心なしかいつもよりもきちっとした感じの服装をしている。
「茜、遅くなってごめん。ヴィーナスフォートに行こうか」
ヴィーナスフォート・・・それは私たちの出会いの場所。お互い友達同士で来ていて、写真を撮りあって一緒にランチしようってことになって。別れ際に、携帯番号の書いたメモを渡されたんだっけ。すっごくドキドキしたのを覚えてる。あのころのように素直になれたら・・・。
「さぁ、行こっ」
「どこに?」
「教会広場だよ」
何で今更、そんなところに行くの?そんなところに行ったら、思い出がポロポロあふれ出ちゃうじゃない。別れの決意をしてきたつもりなのに、すでに2人の思い出が走馬灯のよう。
「茜・・・これを受け取って」
ずいぶん大きなスポーツバッグを持っているなぁ、と思っていたのだが、なんとそこから出てきたのは、赤い薔薇の花束。
「これ・・・私に?」
「僕たち・・・最近ギクシャクしていたよね。忙しくてイライラしていて、茜の淋しい気持ちにも応えてあげられなかった。だけど、このままじゃ嫌だ」
「涼くん・・・私のことなんて、もう嫌いだと思ってた」
強く、強く、抱きしめられた。
そして、涼くんは優しくささやいた。
「加賀見茜さん、どうか僕と結婚してください」
私の涙腺が決壊した。なんで・・・なんで、そんなこと言ってくれるの?こんな素直じゃない私に。止まらない涙の私に涼くんはそっとキスをくれた。
「答えはYES?それともNO?」
私の瞳を覗き込んで聞く涼くんに。
「YESに決まってる!ホントに私でいいの?」
「茜が、いいの。茜じゃなきゃ、駄目なの。出会ってからずっと、茜のことが大好きでたまらないんだよ」
涙止まらぬまま私は、
「・・・・っっひっく、よろしくおねがいします!」
泣き顔の笑顔になった。
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