第一話「戦う少女」

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第一話「戦う少女」

 ここは何もかも壊れ、人は朽ち果てた、何もない世界……  全ての生き物が存在しない滅びの世界……  何もない、ただ風が吹くだけの世界……  そんな世界でただ一人の人間は、その光景に絶望してしまった 「あ、あ、ああああ……」  するとその瞬間、人間の影から化け物が生まれる 「ヴァアアアアアアアアーーーー!!!」  生まれてきた瞬間、叫び声をあげる化け物の様子を小さな精霊がずっと見ていた__ 「急がないと、このままでは大変な事になってしまう……!」  精霊はそう言って、化け物のあとを追う。 _______________________ 「さようならー」「ばいばーい」「また明日ー」  帰りのホームルームが終わり、教室から出てくる生徒達の声が廊下に響き渡る 「先生さようならー」  少女 天羽乙愛(あもうとあ)は廊下を走り、階段を素早く降りていく。 「コルルァ!天羽!廊下を走るなぁ!!」  体育の先生が怒鳴る 「ごめんなさーい!」  しかし乙愛は反省しているフリをして、走り続けていた。  すると廊下の角で青リボンの水色おさげの少女とぶつかってしまう 「うわぁっ!?」「きゃっ!?」  あまりの衝撃で、お互いその場に尻餅をつく。  二人の 「いてて……」  と言う声が重なり、静まりかえった廊下に小さく響く 「天羽! もう、言わんこっちゃない!」  体育の先生が近づいて来る……  ソワソワする周りを見て、真っ青な顔をする乙愛 「あわわわわわ……」  しかし、はっと気づくと、ぶつかった少女の手を握ってその場から逃走した 「あっ!? こら!!」  乙愛は一目散に走って、なんとか体育の先生から逃れた。 _______________________  行き着いた先は、自販機のある休憩所のところ。  乙愛は少し落ち着いてから、ぶつかった少女に声をかける 「さっきはごめん! 大丈夫? 怪我してない?」 「あ、大丈夫です……」  相手の少女は少し顔を上げ、気弱そうに言った  その顔を見て、乙愛は思わず 「あーっ!」  と叫ぶ。  ぶつかった相手は、乙愛と同じクラスの水上伊紗奈(みなかみいさな)だったのだ。 「水上さん!大丈夫!?」  焦って思わず、同じ事を二回聞いてしまう乙愛  伊紗奈は少し、身体をビクッとさせた 「だ、大丈夫です……」  少し戸惑うも、すぐに答える。  その言葉を聞いてホッと息を吐いてから、乙愛は近くの自販機に目を向ける 「何か奢るよ! お詫びとして!」 「え、別にいいですよ。申し訳ないです……」  乙愛にそう言われるも、伊紗奈は断った  しかし乙愛は諦めない。 「気にしないで! 元はといえば、廊下を走ってた私が悪いんだから」  乙愛がそう言うと、伊紗奈は 「で、では、えーっと…お、お茶を下さい」  と、申し訳無さそうに言う  二人は自販機の近くのベンチに座り、買った飲み物を飲む  伊紗奈はお茶を、乙愛はミルクティーを飲んでいた。  すると、伊紗奈がそっと口を開く 「私、友達がいなくて……」 「さっきの天羽さんみたいな事、急にされたら、どうしたら良いのか……分からないんです」  少し弱々しい声で言う伊紗奈  伊紗奈の発言を聞いて、乙愛は 「あ、ごめん……困らせちゃったよね?」  と、申し訳無さそうに謝る  しかし伊紗奈は、無理矢理作ったような笑顔で言いかけた 「気にしないで下さい。人見知りしてる私が悪いんですから__」  伊紗奈の表情を見て、乙愛はすぐに、伊紗奈の言葉を遮って強めに言う 「ううん、気にするよ!」 「っ……!」  その言葉を聞いた瞬間、伊紗奈は驚きと同時に、こんな自分を気にしてくれる人がいる事が嬉しかった。  伊紗奈に見えないように顔を下げ、乙愛は一瞬、ような表情をする  が、すぐに心の内で覚悟を決め、彼女に聞く 「あのね、伊紗奈ちゃんが嫌じゃなかったら、なんだけど__」 「私の、友達になって欲しいんだ!」  乙愛は顔を上げて伊紗奈の手を握る  が、伊紗奈はその手から僅かな震えを感じ取った。  迷うように視線を揺らがせながらも、言い切る乙愛  その言葉は普段、気弱で人見知りな伊紗奈にとってとても温かいものに感じ、胸の内に喜びを芽生えさせた。 「私で良ければ、友達になりたいです。天羽さんの」  同じくどこか迷うような目線で、伊紗奈が乙愛の思いに応える  乙愛はその言葉を聞いて少し安心したのか笑顔で彼女を迎え入れた 「良かった! あ、でも、友達になるなら、お互い平等にしようよ」 「私は伊紗奈ちゃんを名前で呼んでるから、私も乙愛って呼んでほしいな」  その言葉を聞いて、伊紗奈は少し考え、笑いながら言う 「私、あまり人を呼び捨てにしないんです。乙愛ちゃんで良いですか?」  伊紗奈がそう聞くと 「それでもいいよ」  と、乙愛は笑顔で返す  窓の外からは、今にも地平線に沈もうとしている夕日が暖かく差し込んできていた…… _______________________ ー下駄箱ー  茜色の夕日に照らされ、カラスたちが忙しなく鳴いている 「それじゃあ、私はこの辺で……」 「あ、ばいばーい! また明日ー!」  と言って伊紗奈に大きく手を振る乙愛  伊紗奈は微笑みながら小さく手を振り返す。  乙愛は伊紗奈と別れ、靴を履いて帰ろうとした  が、その瞬間、空から白い羽根が落ちてくる  白い羽根を拾って、乙愛は空を見上げた。  わぁ〜、綺麗な夕日……  月も出てきてるし、星も__ん?  乙愛はが視界に入り、それを不思議に思う顔で1つ、星のようなものを見る。  流れ星かと思ったけど、星にしては動きが変……  動きが遅いというか、少しふらついている。  星のようなものは、だんだん沈んでいき、木々の中に落ちていく 「あ! あそこに落ちていった!」  気になった乙愛は、落ちた場所へと向かった。
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