第二話「初任務」

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(あの少女、もしかして……!)  ぼそっと呟くアンジュ  少女の顔は変わらず無表情だが、乙愛はそんな少女に見惚れてしまう 『……』  少女と目が合ったまま、二人の間に沈黙が流れる……  しかし先に口を開いたのは、相手の少女の方だった。 「ぼーっとしないで。私は影の化け物を倒すから、あなたはその子を」 「え、あっはい!」  乙愛にそう言うと刀を出して、影の化け物の方へ向かう少女  対して乙愛は、女の子を抱きかかえて、少し遠くに離れた。 「ヴヴヴ……ヴヴヴ……」  影の化け物は少女を囲む  少女は周囲を見回して、乙愛達の居場所を把握し、遠くにいるのを確認する  少女は指をパチンと鳴らし、片手に炎を纏わせ、その炎を自由自在に操り、周囲の敵を燃やし尽くす技 「業火絢爛(ごうかけんらん)」  を繰り出して、影の化け物を倒していく 「凄い……あれが、戦少女!」 「オオオオオオ……!」  その様子に見惚れる乙愛  そんな乙愛達の背後に、本体の影の化け物がいた  しかし二人は気づかない。  気づかない二人に、影の化け物の攻撃が迫る 「っ!」 「あっ!」  少女と女の子は気づく  女の子の視線で乙愛も気づいたその瞬間、影の化け物の動きが止まった。  っ……! って、あれ……?  影の化け物が、止まった……?  不思議に思った乙愛は、影の化け物の発生源と言われている影を見る  すると、影には大量の小刀が刺さっている。  少女が、自身の技の 「影縫い」  で、影の化け物の動きを封じていたのだ。 「ヴヴヴ……! ヴヴヴ……!」  動けない怒りを表すかのように唸る影の化け物 「大丈夫……」 「今、何とかする……!」  そう言って少女は刀を構えた。  ! もしかして、あの子は影の化け物を倒そうと……!?  駄目、そんなの__  そんなの駄目だよ……!  心の中でそう思うと乙愛は、その少女のやろうとしてる事を止めようとする 「待って! この子を倒さないで! お願い!!」  しかし、そんな乙愛に対して首を傾げる少女 「勘違いしないで、私はこの子の動きを止めただけ」 「倒したりはしない。戦少女はそういうものだから……安心して」  少女がそう言うと乙愛は安心した  が、少女は無表情のまま静かな口調で言う。 「だけど、その内動き始める……」 「うーん、どうしよう……」  少女が言ったのに対して、乙愛は頭を抱えた。  そんな乙愛を見た少女は 「あなたは、何がしたいの……?」  と、乙愛に問いかける  急に聞かれて驚く乙愛  対して少女は、無表情できょとんとしたまま……  そんな二人の頭に、また再び、影の化け物の心の声が聞こえてきた。 (ゔヴu……助ケテ……助ケテ……助ケテ……!)  ! さっきの声と違う……  さっきは、もう全部諦めてる感じだったのに、今は__  さっきまで、生きるのを諦めている様な事を言っていたのに、急に助けを求める声に変わっていて、乙愛は一瞬困惑する 「今の声……!」 「貴女も聞いたのならば、もう答えは見つかっているはず……」  少女にそう言われ、乙愛は両手を組む  そして目を閉じ、静かに祈り始めた (私は、あの影の化け物を助けたい! 救いたい! なんとかしてあげたい!)  乙愛が祈っている間、影の化け物が襲いかかって来る  しかし、刀を用いてそれを阻止する少女  刀と影の化け物の攻撃のやり合う音に、乙愛は不安を煽られ、怖気づく 「怯まないで、そのまま祈り続けて……っ!」  少女がそう言うと、乙愛は祈るのを止めずに続けた (だからお願いします……! あの子を助ける為に、皆を守る為に、天使の力を__貸してください!!)  乙愛がそう祈ると、乙愛の両手から光が生み出され、その光が弓矢の形になる (! アンジュさん! これ、もしかして……!) (乙愛、貴女の想いに答えましょう。その力で影の化け物を浄化して下さい!!)  アンジュに言われ、乙愛は頷き、弓矢を構えた。  すると影の化け物は、自分の身体の中心を腕で塞ぐ。 (! アンジュさん! あれは……!?) (影の化け物が自分の核を塞いだのです! 核というのは、影の化け物の弱点……人間でいえば心臓部分! 破壊すれば浄化した、という事になります!!)  アンジュがそう言ったのに対し、乙愛は影の化け物をじっと見て呟く 「えっと、核が見えないけど……?」 「……見えない理由は、核が影の化け物の肉体の中にあるから見えないだけ」  少女はそう言うと、影の化け物の両腕を、刀で斬り落とした  影の化け物の腕から、黒い液体が噴き出す。 「グォオオオオオオオオ!!?」 「……っ! ごめんね……」  痛そうに悲鳴をあげる影の化け物  少女は影の化け物に謝ってから、もう一度刀で、中心に切れ目を入れる  切れ目を入れた中心の傷が開く  そして、開いた所から僅かに、赤色のハート型の球体が剥き出しになった
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