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少女の声で教室の中は静まり返る
しかし少女を見て、見た目が自分を助けてくれた少女と一致し、思わず声をあげる乙愛
「あーーーーっ!?」
「あ、天羽さん? ど、どうしたの? し、知り合い?」
急に叫んだ乙愛にびっくりしたクラスメイトは、乙愛に知り合いか問いかけた
「え? あーごめん! 人違いかも!」
「なんか昨日、あの子に似た少女と、出会って〜……あははっ……変だよねー、似てる子見て、驚くの……違う人かもしれないのに……」
乙愛がそう言ったのを聞いて少女は、ほぼ確信を持って、乙愛に聞く
「あなた、天羽乙愛さん……?」
少女に聞かれ、乙愛は焦って返事をする。
その返事で、彼女の存在に気づいた少女
周りを確認し、少し考えたような素振りの後
「ついてきて」
と静かに言い、その場を去る
乙愛も急いで少女の後を追う。
_______________________
乙愛達が教室を出ると、教室内がより一層ザワザワして、その騒がしい声が廊下にまで聞こえてきた
一方乙愛は、教室内で騒ぎそうになった事を気にしていて、少女にその事を言おうとした
が、少女の雰囲気からして、とても言えそうにない。
「あ、あの〜……」
乙愛が声をかけても少女は無言でいる。
二人は歩いて人目の少ない所に来た
「さ、さっきの事は……ごめんなさい」
「……何が?」
乙愛が謝ると少女は疑問に思い、首を傾げ、やっと口を開く。
「いや、その……教室で大声を出してしまった事……人違いかもしれないのに」
「それは別に大丈夫、あの時貴女を助けたのは私だから。でも__」
乙愛がそう言うと、少女はそんな事気にしてない感じで言う
しかし、無表情で振り向き、乙愛を見る
「あ、あの……」
無表情なのに、咎めるような視線……
少女の目つきに思わず言葉が震えた乙愛
少女は、乙愛が自分を見て驚いた事を気にしているのではない
危うく、自分達が戦少女だという事がバレそうになったのを気にしていたのだ。
「……貴女はもう少し人目を気にして。クラスメイトが貴女を止めなかったら、私も貴女も正体がバレてた」
「戦少女って、正体がバレたら駄目なんですか……?」
少女の言葉に乙愛は疑問を抱く
そして乙愛は、思わず少女に聞いてしまった。
「絶対バレては駄目。特に今はね、戦少女は人知れずに戦うものだから……一般人に知られては駄目」
そう言った少女の声は少し震えていた。
まるで過去に何かあったかのように……
「正体を知られたら、大変なんですか……?」
乙愛が恐る恐る聞くと、少女は無表情で続けて言う
「正体を知られたら、貴女の大切な家族や友人などの身内は、もしかしたら敵の人質にとられるかもしれない」
「それに、危険な目に遭うかもしれない……だから絶対、正体を話しては駄目」
確かに、この子の言う通りだ……
これから戦うというのに、周りに余計な心配をかける訳にはいかない
それにもし、大切な人達が戦いに巻き込まれて怪我でもさせたら__
駄目、そんなの駄目だよ……!
乙愛の頭に大切な家族や友達の姿が浮かび、心に不安が込み上げてくる。
「……分かった、ありがとう。忠告してくれて」
乙愛がそう言うと、無表情だった少女は一瞬、安心したような表情を見せる
が、またすぐに無表情に戻った。
改めて二人は歩いて、目的地に向かう
その前に……
「あの、私は天羽乙愛って言います! その、名前は……?」
「……鬼塚美咲」
乙愛が名前を聞いたのに対して、少女__美咲は、静かな声で名乗る。
ー続ー
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