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第三話「立ち向かう勇気」
「美咲ちゃん、これから何処に……?」
お互い名乗った二人
部室までの長い廊下を歩く途中、乙愛は美咲に聞く
普通に美咲の名を呼ぶ乙愛
美咲は、まだ出会ってすぐなのに、自分の名前を呼ばれた事に動揺を隠せない。
「えっ……ああ、私や他の戦少女達が活動している部活__ボランティア部の部室へ向かう」
美咲の言葉に対し、乙愛は急に足を止める
「? どうしたの?」
「ボランティア部って__何?」
疑問を持った美咲が聞くと、乙愛は首を傾げて言う
「私達戦少女は、人知れず戦う__だけど、影の化け物などが現れない普段は、ボランティア部という部活で人助けをしているの」
「人助け……!」
美咲がそう言うと、乙愛は目をキラキラさせ、喜びを顔にみなぎらせる
「うん……人助け。何その目、どうしたの?」
不思議そうに問いかける美咲
「いや私ね、小さい時から人助けが大好きで、困っている人がいたらすぐ助けに行ってたの」
「だけど、そんな私をあんまり良く思わない人もいるみたいでさ……小学生、中学生と、続けて虐められたんだ……」
笑顔で答えて、乙愛は話し始めるもすぐに悲しそうな表情をして言う
出来る限り明るく話す乙愛だが、その過去を思い出してしまったのか、少し声が震えていた。
「ごめん、聞いてはいけない事を聞いてしまったね。乙愛の傷を抉るつもりは無かったの……」
美咲も足を止め、乙愛の頭を撫でて謝る。
「ありがとう美咲ちゃん、もう大丈夫だよ」
「昔の話だし……今の私の周りには、もう美咲ちゃんみたいな大切な友達がいるんだから」
乙愛は、瞳に浮かんでいた涙を拭って言う
そんな乙愛を見て、美咲は不安気に聞く。
「……私は、あなたの……ううん、乙愛の理想の友達になれているかな?」
美咲に聞かれ、乙愛は少し考えてから、自信なさげに答えた
「きっと、なれてるよ。私の__理想の友達に」
「……そう」
乙愛の返事に対して、本当にそうだろうか……と、不満そうな顔をする美咲
乙愛も不安そうな顔をしていたが、すぐに表情を明るくした。
「ささっ! 暗い話はこのくらいにして、部室に行こう!」
乙愛は笑ってそう言うと、美咲を追い越して先に行く
「ねぇ乙愛……先に行くのは良いけど、場所__分かるの?」
「あ! そうだった〜! うぅ〜、案内して〜美咲ちゃ〜ん」
乙愛は美咲に言われ、ピタッと止まる
そして、涙目で美咲に頼む
「うん、分かった……行こ」
美咲はコクリと頷き、二人で歩き出す
二人の声が廊下に響く中、そんな二人を向かい側の校舎から見つめる少女がいた。
「ふぅ~ん。あの子が美咲の言ってた、新人の戦少女……」
「どんな子なのか、ちょっと楽しみになってきた」
_______________________
そうこうしてるうちにボランティア部の部室前に着いた二人。
「着いた、ここがボランティア部」
「おぉ〜……」
美咲が足を止めて言うと、部室の前を見回す乙愛
扉の窓の所には、ボランティア部と書かれた大きな貼り紙……
部室内は見えないようになっていて、教室札にはボランティア部と書かれている。
乙愛はふと気になって、部室の前にあるポストに目をやった
「美咲ちゃん、このポスト何?」
「それは色んな人からの、依頼の手紙が入るポスト。ボランティア部の普段の仕事は、その依頼を引き受ける事だから」
美咲に言われると
「成程ぉ〜」
と、乙愛は呟く
「じゃ、入るよ……」
美咲はそう言うと、部室の扉を開ける
扉が開いた瞬間、衝撃的なものが視界に入り、乙愛は思わず声をあげ、自分の目を疑ってしまう。
「って__うわぁーーーー!?」
「ん? 騒がしいぞ、喰ってやろうか……!」
なんとそこには……
おでこに角の生えた、腰ぐらいの癖のある長い髪で、和服を着た、鬼のような女性がいた
「そんな驚く事か? いやまぁ鬼だから驚いて当然なんだけどさ……」
「ちょっと驚かせたかっただけだ、案ずるな。新しい戦少女__天使の力の戦少女であるそなたを喰ったりしない」
女性は、乙愛の様子にツッコミを入れながらも、彼女を安心させる。
一方乙愛は、自分が戦少女だと知っている事に驚く
「あれ? 何で私が戦少女だと知っているの?」
「乙愛様! 口の聞き方に気をつけてください! このお方はアンジュ様と同じ、神聖の一柱ですよ!」
不思議に思った乙愛が、女性に聞いたのに対し、ナビルが口を挟む。
「あ、あなたもそうなんですか!?」
「ああ」
乙愛が聞くと、女性は頷いて名乗った
「いかにも。鬼の力を司る神聖……我が名は、酒呑童子」
酒呑童子さん……
なんだろ? すごく見た目は禍々しくて怖いし……
神聖って感じはしない
けど、悪い人じゃない……
そんな事を考える乙愛
新たな神聖__酒呑童子の名を聞いて
「鬼の力って、もしかして……」
と、乙愛は呟き、美咲をじーっと見る。
「……」
美咲は乙愛の目線を感じると、首元に下げていたペンダントを乙愛に見せて言う。
「私の纏う、鬼の力の神聖……私のパートナー」
「鬼の力って事は、同じ戦少女なんだね!」
乙愛がそう言うと、美咲は頷く
が、周りをキョロキョロして酒呑童子に問いかける。
「そうだけど……私以外に、今はもう一人いる。酒呑童子、あの子は?」
美咲に聞かれると、酒呑童子はため息をついて、困ったように言う
「全くあの小娘は……なんとか止めようとしたのだが、やはり美咲でないと制御は困難な様だ」
酒呑童子がそう言った途端、美咲は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔をした。
「ど、どうしたの? 美咲ちゃん?」
「あー……美咲はあの娘が何かしでかすと知ると、あんな顔になるのだ。まぁ無理も無かろう」
酒呑童子は乙愛の質問に答えるも、乙愛はますます何故なのか分からなくなる
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