第三話「立ち向かう勇気」

1/4
前へ
/25ページ
次へ

第三話「立ち向かう勇気」

「美咲ちゃん、これから何処に……?」  お互い名乗った二人  部室までの長い廊下を歩く途中、乙愛は美咲に聞く  普通に美咲の名を呼ぶ乙愛  美咲は、まだ出会ってすぐなのに、自分の名前を呼ばれた事に動揺を隠せない。 「えっ……ああ、私や他の戦少女達が活動している部活__ボランティア部の部室へ向かう」  美咲の言葉に対し、乙愛は急に足を止める 「? どうしたの?」 「ボランティア部って__何?」  疑問を持った美咲が聞くと、乙愛は首を傾げて言う 「私達戦少女は、人知れず戦う__だけど、影の化け物などが現れない普段は、ボランティア部という部活で人助けをしているの」 「人助け……!」  美咲がそう言うと、乙愛は目をキラキラさせ、喜びを顔にみなぎらせる 「うん……人助け。何その目、どうしたの?」  不思議そうに問いかける美咲 「いや私ね、小さい時から人助けが大好きで、困っている人がいたらすぐ助けに行ってたの」 「だけど、そんな私をあんまり良く思わない人もいるみたいでさ……小学生、中学生と、続けて虐められたんだ……」  笑顔で答えて、乙愛は話し始めるもすぐに悲しそうな表情をして言う  出来る限り明るく話す乙愛だが、その過去を思い出してしまったのか、少し声が震えていた。 「ごめん、聞いてはいけない事を聞いてしまったね。乙愛の傷を抉るつもりは無かったの……」  美咲も足を止め、乙愛の頭を撫でて謝る。 「ありがとう美咲ちゃん、もう大丈夫だよ」 「昔の話だし……今の私の周りには、もう美咲ちゃんみたいな大切な友達がいるんだから」  乙愛は、瞳に浮かんでいた涙を拭って言う  そんな乙愛を見て、美咲は不安気に聞く。 「…………ううん、」  美咲に聞かれ、乙愛は少し考えてから、自信なさげに答えた 「。私の__」 「……そう」  乙愛の返事に対して、本当にそうだろうか……と、不満そうな顔をする美咲  乙愛も不安そうな顔をしていたが、すぐに表情を明るくした。 「ささっ! 暗い話はこのくらいにして、部室に行こう!」  乙愛は笑ってそう言うと、美咲を追い越して先に行く 「ねぇ乙愛……先に行くのは良いけど、場所__分かるの?」 「あ! そうだった〜! うぅ〜、案内して〜美咲ちゃ〜ん」  乙愛は美咲に言われ、ピタッと止まる  そして、涙目で美咲に頼む 「うん、分かった……行こ」  美咲はコクリと頷き、二人で歩き出す  二人の声が廊下に響く中、そんな二人を向かい側の校舎から見つめる少女がいた。 「ふぅ~ん。あの子が美咲の言ってた、新人の戦少女……」 「どんな子なのか、ちょっと楽しみになってきた」 _______________________  そうこうしてるうちにボランティア部の部室前に着いた二人。 「着いた、ここがボランティア部」 「おぉ〜……」  美咲が足を止めて言うと、部室の前を見回す乙愛  扉の窓の所には、ボランティア部と書かれた大きな貼り紙……  部室内は見えないようになっていて、教室札にはボランティア部と書かれている。  乙愛はふと気になって、部室の前にあるポストに目をやった 「美咲ちゃん、このポスト何?」 「それは色んな人からの、依頼の手紙が入るポスト。ボランティア部の普段の仕事は、その依頼を引き受ける事だから」  美咲に言われると 「成程ぉ〜」  と、乙愛は呟く 「じゃ、入るよ……」  美咲はそう言うと、部室の扉を開ける  扉が開いた瞬間、衝撃的なものが視界に入り、乙愛は思わず声をあげ、自分の目を疑ってしまう。 「って__うわぁーーーー!?」 「ん? 騒がしいぞ、喰ってやろうか……!」  なんとそこには……  おでこに角の生えた、腰ぐらいの癖のある長い髪で、和服を着た、鬼のような女性がいた 「そんな驚く事か? いやまぁ鬼だから驚いて当然なんだけどさ……」 「ちょっと驚かせたかっただけだ、案ずるな。新しい戦少女__天使の力の戦少女であるそなたを喰ったりしない」  女性は、乙愛の様子にツッコミを入れながらも、彼女を安心させる。  一方乙愛は、自分が戦少女だと知っている事に驚く 「あれ? 何で私が戦少女だと知っているの?」 「乙愛様! 口の聞き方に気をつけてください! このお方はアンジュ様と同じ、神聖の一柱ですよ!」  不思議に思った乙愛が、女性に聞いたのに対し、ナビルが口を挟む。 「あ、あなたもそうなんですか!?」 「ああ」  乙愛が聞くと、女性は頷いて名乗った 「いかにも。鬼の力を司る神聖……我が名は、酒呑童子(しゅてんどうじ)」  酒呑童子さん……  なんだろ? すごく見た目は禍々しくて怖いし……    けど、悪い人じゃない……  そんな事を考える乙愛  新たな神聖__酒呑童子の名を聞いて 「鬼の力って、もしかして……」  と、乙愛は呟き、美咲をじーっと見る。 「……」  美咲は乙愛の目線を感じると、首元に下げていたペンダントを乙愛に見せて言う。 「私の纏う、鬼の力の神聖……私のパートナー」 「鬼の力って事は、同じ戦少女なんだね!」  乙愛がそう言うと、美咲は頷く  が、周りをキョロキョロして酒呑童子に問いかける。 「そうだけど……私以外に、今はもう一人いる。酒呑童子、あの子は?」  美咲に聞かれると、酒呑童子はため息をついて、困ったように言う 「全くあの小娘は……なんとか止めようとしたのだが、やはり美咲でないと制御は困難な様だ」  酒呑童子がそう言った途端、美咲は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔をした。 「ど、どうしたの? 美咲ちゃん?」 「あー……美咲はあの娘が何かしでかすと知ると、あんな顔になるのだ。まぁ無理も無かろう」  酒呑童子は乙愛の質問に答えるも、乙愛はますます何故なのか分からなくなる
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加