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彼女は小野田真由。
。
約一年前にこのコールセンターで働き始めた時の同期だ。
愛嬌のある外見とキャラだから、一部のマニアやモテない冴えない男子には推されそうだなと私は評価している。
私より五個下の三十歳。
三十歳と言えば世間では十分に大人の女性、というかロリコン気味な男には十分オバサンだろうけれど、四捨五入してアラフォーの私からしてみれば、妬んでしまうほどに若い。
羨ましい。
「三十歳になっちゃったー、どうしよぉー」
一ヶ月ほど前に誕生日を迎えた彼女が、私の二の腕を掴み揺すりながらそう言った時には、黒いモヤが私の心臓から身体全体に広がっていくような感覚になった。
そうなるほどまでに私は歳を重ねたのかと少し虚しくもなった。
「三十歳なんてまだまだ全然若いんだよー」
黒いモヤが広がっているのを隠し、そう言った私に真由は、
「理絵さんは若く見えるもん、私と同い年くらいに見えるよ、ホントにー!」
とキラキラした目で言った。
全く要領がいい。
私物を置いておくロッカールームからオフィスまで真由の婚活話を聞きながら向かう。
時刻はもうじき八時半。
今日もお仕事の時間の始まりだ。
一体いつまで退屈な同じような毎日が続くんだろう。
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