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――番組出演を終えて2週間後。
多恵は家に引きこもっていた。
番組出演は散々だった。
緊張している少女たちにベテランぶって応援したものの、実際舞台に上がってみると、舞い上がってしまったのは自分の方だった。
時間が押しているのだろう。大汗をかきながら早口で質問してくる司会者。
無数の眩いスポットライト。興味なさそうな観客の視線。3台の大型カメラの先の何百万という視線に突然気付き、慄いた。
司会者から何を問われたのかも覚えていない。本当の年を言ってしまわなかっただろうか。
一応、最後まで歌って踊ったのだろう。気付いたら舞台袖に戻っていて、史子が朗らかな顔で「お疲れ様!」と言っていた。
それから2つのイベントに出た。
食品メーカーの新商品発表会と、映画の試写会イベントだ。
衣装は何でもいいというので、番組出演の衣装からインナーを変えたりタイツを変えたり、スカーフのコサージュを変えたり。
そちらは番組ほどのカメラはなかったので、多恵は史子と二人、求められたコメントに無難に応じることが出来た。
そうして、『ルミルカ』25周年記念の再結成は終わった。
多恵は一連の出来事を思い返し、ソファの上で大きくため息をついた。
番組は録画したものの、観ることは出来ていない。竜司に諭されて番組出演を大っぴらに吹聴してはいないが、外に出れば笑われるのではないかと怖いのだ。
竜司からは「友達が見て、すごかったって言ってた」と告げられた。
「そ、それは観ていられないくらいやばかったってこと……?」
「いや、そんなんじゃなかったけど。格好良かったって」
「最近の子は優しいよね……」
そうだ。昔と違って皆、優しい。あのボイストレーナーもずいぶん若かった。褒めて伸ばすタイプなんだろう。
ありがたいが、なんだかいたたまれない。いっそ「このドヘタが!」と罵ってもらった方が勘違いしなくて済むというものだ。
思い出して低く呻き、クッションを力任せに抱きしめると、携帯が鳴った。
ため息をついて手探りで携帯を掴み、通話ボタンを押す。
その後に告げられた一言に、多恵は自分の耳を疑った。
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