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多恵はまた、スポットライトの当たる壇上に立っていた。
多数のカメラが向けられ、まぶしさに目を細める。
舞台袖から順に人が出てきて、多恵の横に並んだ。
隣に立つ青年を見上げて驚愕する。顔、小っさ! 同じホモ・サピエンスとは思えない。彼は戦隊ヒーロー主演俳優だったと多恵は思い出した。
舞台の端には『年末!大復活!』で泣きそうになっていた3人組アイドルが揃って立っていた。トロフィー授与のアシスタントらしい。
目が合うと微笑んで目礼してきたので、多恵も慌てて小さく会釈した。
落ち着いた雰囲気のタキシードの司会の男がマイクを向けてくる。
「さ、ルカさん。ベストレザー賞、おめでとうございます! ご感想をどうぞ」
そうなのだ。
なぜか、年に一度のベストレザー賞を受賞してしまったのである。
あの衣装のおかげではあるのだろう。自分たちでリメイクしたことがどこからか漏れ、それが注目されたようなのだ。
しかしそれでベストレザー賞とは……。
実は、今後事務所の衣装チームを手伝わないかと草野から持ちかけられてもいるのである。
一方の史子は、衣装に着けていた生花のコサージュがSNSで反響を呼び、おっとりした雰囲気も相まって園芸番組への出演が決まったという。
まさか、こんなことになるとは。
惨敗だった番組出演を一生悔いて終えると思っていたのに。
多恵は頬が引きつったまま、ゆっくりと口を開いた。
「人生、何があるか分からないなと思いました……」
《 おしまい 》
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