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「お疲れ、紫乃。頑張ったな」
長谷川さんはシャツの襟元を直しながら言うと、後ろを向いて自分のビルから見ていた人たちに軽く手を振った。
「壱さん、これいる~?」
「キープで」
「了解」
2階からの声にもう一度手を上げた長谷川さんに、カフェオーナーも指で丸を作ってから店内へと戻った。
「あの…どういうこと?征二に何て言ったの?」
「うん?このビルに入居している人は、俺に‘ハセイチ’という呼び名が付く前から知っている人たちばかりだ。今の動画が必要かと聞かれたが今すぐにはいらないからキープしておいてってこと。アイツには、今後紫乃に連絡したり視界に入ったら俺より影響力のある奴から動画の拡散があるかもな、と。謝っておいた方がいいんじゃない?と忠告しただけだ。今からむち打ちの診断書をもらってくるとも言ったな。どう見てもアイツの分が悪い画だろ?まあ…そうさせていたんだが」
彼はそう言うと
「紫乃は大丈夫か?」
「はい。何かわからないことを言われていたのでとても冷静でいられました」
「すっきり、未練なし?」
「それは全く。ありがとうございました」
「よし、祝杯を上げるぞ」
と歩き始める。
「すみません、長谷川さん。今日は予定があって…」
「予定?」
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