double punch*ダブルパンチ

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翌日もハローワークに行ったが特別収穫なしの帰り道、通りがかりのカフェに立ち寄った。しばらくどこにも立ち寄らず節約していたが、ふと休息したくなったんだ。 たっぷりのカフェオレを飲みながら、いつもバッグに入っている詩集を開く。私は、どのページから読んでもいい詩集というものが好きだ。そしてその日開いたページには意味があるのかも…と少し思っている。また、こうして読む場所や自分の気持ちが変わると、詩の捉え方は変化するので飽きることがない。 ちょっとしたささやかな非日常に、転職活動の進まない苛立ちを一瞬忘れることが出来た。 そしてビルの一階にあるカフェを出たとき、従業員募集中という張り紙を見つける。今、最も私を引き寄せる文字だ。内容は、このビルの上にあるパソコン関係の仕事の手伝いのようだが、詳細は書いてない。問い合わせる必要があるようだけど、その前にどんな会社か私も調べないといけない。怪しい会社は御免だから。 この張り紙を写真に撮ろうとスマホを構えた時 「失礼ですが、求職中の方ですか?」 と声をかけられた。 「あ…はぃ…一応…すみません…えっと…写真ダメでしたか?」 長身の男性はビルから出てきたようなので、張り紙の関係者かと思い、とりあえず謝り確認する。彼は怒っている様子はない。ただ私をさっと観察した風ではあったが… 「昨日これ貼ったんです。良かったら詳細のご説明をしましょうか?」
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